25時 (1967年の映画)

1967年に公開された映画『25時』は、著名なアンリ・ヴェルヌイユが監督を務め、カルロ・ポンティが製作を担当した作品です。原作は、第二次世界大戦後の1949年に発表されたC・ビルジル・ゲオルギュの同名小説。主演は、実力派のアンソニー・クインと、美しきヴィルナ・リージが務めています。この物語は、大戦という時代の激流に巻き込まれ、理不尽な運命に翻弄されるルーマニアの素朴な農民夫婦の悲劇を描き出します。

物語の主人公は、ルーマニアで妻スザンナと子供たちと共に平穏な生活を送ることをただ願っていた農民、ヨハン・モリッツです。しかし、第二次世界大戦の勃発が、彼らのささやかな幸せを根底から覆します。悲劇の発端は、ヨハンの妻スザンナに横恋慕した地元の警察署長ドブレスコの悪意ある企みでした。ドブレスコは、ヨハンをでっちあげのユダヤ人として密告し、彼を強制労働収容所へ送り込んでしまうのです。これだけでも非道な行為ですが、ドブレスコの策略はさらに続きます。彼は、ユダヤ人の土地が没収されるという偽りの名目のもと、スザンナに夫との離婚届に署名するよう強要するのでした。

家族から引き離され、苛酷な収容所生活を送っていたヨハンに、やがて脱走の機会が訪れます。命からがら収容所から逃れ、隣国ハンガリーへとたどり着いたヨハンでしたが、今度はパスポートを所持していなかったことからスパイ容疑をかけられ、逮捕されてしまいます。そして、ハンガリー人の代わりにドイツの工場へと送られ、過酷な労働に従事させられることになります。

ドイツで労働者として過ごす中で、ヨハンはドイツ親衛隊のミュラー大佐と出会います。この出会いが、ヨハンの運命を再び大きく変えることになります。彼はミュラー大佐の計らいにより、オレンブルグ収容所の看守という、それまでとは全く異なる立場に身を置くことになるのです。しかし、戦争の終結が近づき、1944年には連合軍がオレンブルグ収容所に迫ってきます。戦況の悪化を悟ったヨハンは、今度は連合軍の前線基地があるワイマールへと逃亡を図ります。

戦争が終結し、ヨハンは戦時中の行動を問われ、ニュルンベルク裁判にかけられることになります。絶望的な状況の中、彼を救ったのは、遠く離れた故郷から妻スザンナが送ってくれた一通の手紙でした。この手紙が彼の無罪を証明し、彼は晴れて自由の身となります。そしてついに、長きにわたる苦難を経て、愛する妻子との再会を果たすのです。

映画『25時』は、第二次世界大戦という巨大な力に翻弄され、人間性が剥奪されそうになりながらも生き抜こうとする一人の男と、彼を待ち続ける妻の姿を通して、戦争の非人道性、個人の尊厳、そして家族の絆の強さを問いかける深い人間ドラマです。時代の波に流され、絶えず立場を変えざるを得なかった主人公の姿は、観る者に戦争というものが個人の人生にいかに想像を絶する影響を与えるかを強く印象づけます。アンソニー・クインとヴィルナ・リージの演技が、この悲劇的な物語に一層の深みを与えています。

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