4'-アミノプロピオフェノン

4'-アミノプロピオフェノン (PAPP) について

4'-アミノプロピオフェノン（PAPP）は、非常に高い毒性を持つ化合物であり、物理的な接触やその煙の吸引によって、薬傷や最悪の場合には死亡する危険性を秘めています。PAPPの毒性の主要な原因は、血液中のヘモグロビンに対する作用にあります。ヘモグロビンは通常、酸素を運搬する役割を担っていますが、PAPPに曝露されると、ヘモグロビンが急速に酸素を運搬できないメトヘモグロビンに変化してしまいます。この現象は、亜硝酸塩中毒と同様のメトヘモグロビン血症を引き起こし、細胞呼吸が妨げられることによって低酸素症を引き起こします。その結果、昏睡や死亡に至ることもあります。

PAPPは1980年代初頭に米国で野生動物防除剤の候補として調査されましたが、実用化には至りませんでした。その後、1990年代からはオーストラリアのビクトリア動物科学研究所の科学者たちが特に注目し、PAPPが野生化した猫やアカギツネなどの外来種を制御するための迅速で人道的な手段として機能することが実証されました。この背景には、一般的に使用される毒物であるフルオロ酢酸ナトリウム（1080）が、人道的な観点から問題を抱えていることがあります。フルオロ酢酸ナトリウムには解毒剤が存在しないため、中毒事故が発生した際の対策が極めて難しいのです。

一方、PAPPには解毒剤が用意されているため、動物福祉の観点からも注目されています。しかし、摂取後に死亡するまでの時間が短いため、解毒剤を迅速に投与することが特に重要です。現時点で確かな効果が示されている唯一の解毒剤は、静脈注射によるものです。

研究者たちは、猫特有の歯列構造と採餌の戦略を生かしてPAPPを専用のカプセルに封入し、猫の餌に混ぜる方法を開発しました。この方法によって、他の動物が誤ってPAPPを摂取するリスクを大幅に減少させる可能性が示されています。このアプローチは、「キュリオシティ」として知られる野生化した猫の防除餌の開発において非常に重要です。

ニュージーランドでは、研究者たちがビクトリア州の科学者と協力し、PAPPと外来捕食者への餌付け技術を独自に開発しました。初期の研究では、PAPPが特に鳥よりも哺乳類に対して強い毒性を示すことが確認され、オコジョやイタチ、そして野生化した猫の駆除を目的として2011年に使用登録が行われました。現代では、PAPPはオーストラリアで野生化した猫、アカギツネ、野犬の制御に使用されています。

一方、ニュージーランドでは低濃度のPAPPによるオコジョの防除が行われており、この濃度では耐性の強い外来種であるポッサムやラットに致命的ではありません。PAPPの使用は、ペースト状または新鮮なひき肉として承認されているため、効果的にオコジョを防除する手段となっています。また、環境中に残留物を残さない特性から、環境汚染の懸念も低いと考えられています。現時点では、ペースト製剤を用いた場合でも、標的以外の生物が誤って補足されるリスクは許容範囲内とされていますが、最近の研究では、一部の鳥が以前の予想よりもPAPPの影響を受けやすいことが指摘されています。

このように、PAPPはその高い毒性を利用しつつも、人道的アプローチと環境への配慮を兼ね備えた方法として、今後の野生動物防除における重要な役割を果たす可能性があります。

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