4四歩パックマン

4四歩パックマン：将棋における奇襲戦法の深淵

4四歩パックマンは、後手が先手の7六歩に△4四歩と応じる将棋の奇襲戦法です。一見、簡単に取れそうな歩ですが、実際は激しい攻防へと発展し、油断すればどちらの側も敗北を喫する可能性を秘めています。

戦法の概要と特徴

将棋入門書にもしばしば登場する4四歩パックマンは、変化に富み、初見では対応が難しい点が特徴です。そのため、研究不足の相手には高い成功率を誇ります。

先手としては、挑発に乗らずに4六歩や2六歩と指すのが一般的ですが、プロ棋士の見解では、4四歩同角と取る方が先手有利とされています。

▲4四同角とすると、△4二飛▲5三角成までは自然な流れです。ここで後手が△4七飛成とすると、▲6三馬△7二銀▲3六馬と進めば先手が優勢になります。そこで、後手は△4七飛成の代わりに△3四歩と指すのが効果的です。この後、様々な変化が生まれます。

例えば、▲4二馬△同銀と交換した後、▲8八銀と守る展開や、▲8八銀とすぐに銀を上げる展開などです。

プロ棋戦における実例

公式棋戦においても、4四歩パックマンは用いられています。2020年には山崎隆之八段が棋聖戦予選、NHK杯本戦、順位戦A級でこの戦法を採用し、3局全て勝利を収めました。ただし、順位戦A級では先後が逆転しており、4四歩が取られて力戦となったのはNHK杯の一戦のみです。2022年には折田翔吾四段もABEMAトーナメントでこの戦法を用いて勝利を収めています。

プロ棋士の意見

瀬川晶司六段と今泉健司四段の対談では、△4四歩に対しては2秒で取るべきという意見も出ていますが、プロ棋士はただ歩を突くわけではなく、何かしらの意図があると考え、慎重に対処することが多いとされています。

変化と対策

様々な変化の中でも、特に重要な局面と対策をいくつか紹介します。

変化1：△9五角

▲8八銀と上がった局面から、後手が△9五角と王手すると、先手は▲6八金や▲4八玉では飛車の利きを失い、△8八角成と銀を取られてしまいます。▲7七銀と上がるのも、△7七同角右成▲同桂△同角成▲6八金△9九馬と進み、後手優勢となります。そのため、△9五角に対しては▲7七飛と打つのが最善策です。

変化2：△4七飛成

▲8八銀の局面から、後手が△4七飛成とすると、先手は▲7七銀では△5七龍と王手、▲6三馬では△7二銀と進み、後手優勢となります。よって、△4七飛成に対しては▲7五馬と指すのが有力です。

△3二銀型：シン・パックマン

将棋ブロガーの二歩千金氏が考案した「2手目△3二銀システム」は、後手番で2手目に△3二銀、4手目に△4四歩と指す戦法です。これは従来のパックマンに比べ、後手の陣形が堅固になり、先手の▲2六歩が負担となる点が特徴です。先手は△4四歩に飛びつかず、通常の戦法で指すのが最善策とされています。

まとめ

4四歩パックマンは、変化に富み、高い戦術的価値を持つ奇襲戦法です。プロ棋戦でも実証されている通り、適切な対策を講じなければ、容易に敗北を招く可能性があります。アマチュア棋士にとっても、研究の価値がある戦法と言えるでしょう。

参考文献

湯川博士、森雞二『奇襲大全』毎日コミュニケーションズ、1999年
週刊将棋編『我が道を行く定跡の裏街道』毎日コミュニケーションズ、2004年

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