5・3仁川事態

5・3仁川事態の概要と背景

5・3仁川事態（いんちょんじたい）は、1986年5月3日に発生した重要な事件で、新韓民主党（新民党）が主導している「直選制改憲1000万署名運動」の仁川・京畿道支部結成大会が、運動圏による激しいデモと警察の暴力的な鎮圧によって中止されたものです。この出来事は、当時の韓国社会における民主化運動の対立を明確に示しました。

経緯と背景

1986年2月、韓国の総選挙において新民党が躍進し、軍事政権の終わりと大統領直選制の導入を求める声が高まりました。この動きに伴い、さまざまな民主化勢力が新民党を支持し、政府に対して強力な改憲要求を行うようになります。ところが、全斗煥大統領はこれに応じることなく、選挙から1年後の1986年2月12日には新民党と運動圏が提携して「民主化のための国民連絡機構」（民国連）を結成し、署名運動を開始しました。

この活動は全国に広がり、特に3月30日に光州市で開かれた改憲推進支部結成大会では、30万人以上の市民が集まる熱気を見せました。このような中、改憲を求める声が急速に高まり、社会の中に新たな風潮が生まれていきました。しかしながら、全斗煥大統領が3月の党首会談で改憲合意の可能性に言及する中、運動を進める中で制度圏と運動圏の間に意見の亀裂が生じ始めました。

仁川事態の発生

運動が続く中、制度圏野党はまずは形式的な民主化の実現を焦点にしていたのに対し、運動圏はより実質的な民主化を求めていました。このため両者の対立が激化し、4月29日の民国連の記者会見では金大中民主化推進協議会共同議長が急進的な学生運動に対する批判を行いました。続く党首会談でも新民党総裁が急進的な運動とは一線を画す stanceを示したことで、運動圏による新民党への批判が高まりました。

事件当日、仁川で予定されていた改憲推進大会を前に、運動圏の学生たちや労働者たちは仁川に集まり、会場周辺を封鎖しました。新民党への批判や政府の改憲提案に対する反対、そして新たな憲法の制定を求めるデモが展開されました。このデモは徐々にエスカレートし、警察との衝突が発生。結果的に大会は中止され、デモは長引くこととなりました。

事件の影響とその後

全斗煥政権はこの事態を厳しく捉え、デモに参加した319名を逮捕し、さらに60名以上を指名手配しました。また、デモの模様をテレビで報道することにより、学生運動の暴力的側面が強調されることとなりました。このような状況は、運動圏と野党との関係をさらに悪化させる結果を招きました。

この事件は、翌1987年の4・13護憲措置に至るまで影響を与え続けました。また、5・3仁川事態をきっかけに、運動圏内でも急進的手法に対する反省が生まれ、より広範な市民を巻き込むための運動方法が模索されることとなりました。

参考文献

• - 韓国史編纂委員会 編著『朝鮮韓国近現代史事典 新版』
• - 青柳純一『これだけは知っておきたい 韓国現代史』
• - 京郷新聞2004年9月5日特集記事「実録民主化運動」(69) 5・3仁川事態

この多くの動きと対立から、韓国の民主化運動はますます複雑化し、ついには韓国社会の変革へとつながっていくのです。

もう一度検索