新韓民主党

新韓民主党：韓国民主化への足跡

1980年代半ば、韓国は第五共和国時代を迎えていました。民主化への国民的熱望が高まる中、1985年1月18日、新韓民主党（略称：新民党）が誕生しました。この政党は、民主化推進協議会（民推協）を背景に、旧新民党の政治家を中心に結成されました。初代総裁には李敏雨が就任し、金禄永、李基澤、趙淵夏、金守漢、盧承煥らが副総裁に選出されました。

新民党の結成宣言は、民主主義の確立と発展、反民主勢力との闘争を掲げていました。特に、大統領直選制の復活と民主化実現を重要な公約に掲げ、国民の支持を集めようとしました。その政治綱領には、大統領の任期を4年とし、再選は1回のみとすること、独裁と独占の排除、地方自治制の早期実施、言論基本法の廃止、軍の政治的厳正中立などが含まれていました。

1985年2月に行われた第12代総選挙では、新民党は予想を上回る躍進を見せました。ソウルや釜山など大都市部を中心に支持を集め、既存の野党である民主韓国党を大きく上回る67議席を獲得し、第一野党の地位を確立しました。選挙後には、他野党からの合流も相次ぎ、議席数は100議席を超えるまでに増加しました。これにより、与党である民主正義党との二大政党制が形成されることになりました。

躍進した新民党は、国民運動にも積極的に取り組んでいました。大統領直選制を実現するための憲法改正を求める「1000万人改憲署名運動」などを展開し、国民世論を喚起しました。しかし、党内には様々な意見や思惑が渦巻いており、常に葛藤を抱えていました。特に、金泳三や金大中といった党内有力者への反発から、一部の勢力が離党する事態も発生しました。

1986年末、李敏雨総裁は民主正義党が提案した議院内閣制改憲を容認する「李敏雨構想」を発表しました。しかし、この案は党内の大統領直選制支持者から反発を招き、金大中や金泳三を支持する70名以上の議員が離党、1987年5月1日に統一民主党を結成することになりました。この離党によって、新民党は第一党の地位を失いました。

その後、1988年4月に行われた総選挙の後、新民党は中央選挙管理委員会の決定により解党されました。新韓民主党は、韓国の民主化に向けた重要な役割を果たしたものの、党内抗争や政治状況の変化の中で、短命に終わる結果となりました。その歴史は、韓国民主化の過程における複雑さと困難さを示す一つの事例として、今なお研究されています。新民党の経験は、韓国の民主化運動と政党政治の変遷を理解する上で重要な意味を持っています。

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