警察の暴力

警察の暴力：構造、人種差別、そして世界各地の事例

警察の暴力、または警察による残虐行為とは、警察官が市民に対して不当または過剰な力を行使し、市民の権利を侵害する行為を指します。これは身体的な傷害、嫌がらせ、精神的な苦痛、暴言、物的損害、そして最悪の場合には殺害にまで及ぶことがあります。

警察官には、警察権の発動による実力行使が行政によって許可されています。しかし、その行使は本来、必要最小限にとどめられるべきであり、過度な暴力に傾倒しないよう、警察比例の原則が存在します。この原則は多くの国で法文化されていますが、現実には警察による暴力は、全体主義的な国だけでなく、民主主義国家においても広く見られる問題です。

発生の構造

警察官の暴力行為の原因は、個々の警察官の精神的な問題に帰結されることがあります。しかし、この様な考え方は、警察組織の構造的な問題を無視したものであり、問題の本質を見誤らせる可能性があります。

王立カナダ騎馬警察のレポートでは、警察組織の構造的な問題として以下の点が指摘されています。

警察組織内における、警察風土や警察職業文化への同調圧力の存在
警察内の不祥事や汚職を黙認する警察風土（Blue Code of Silence）による、違法行為を行う警察官とそれを支持する構造の継続
上司からの命令が絶対であるなど、強固な権威主義的な縦社会の存在（権威主義的な組織ほど、個人の倫理的な判断が阻害されるという研究も存在します。）
警察組織内における内部調査などの自浄機能の欠如

ニューヨーク大学教授のジェローム・スコルニックは、警察官が職務を通じて、社会に対して権力的な感覚を持ち、自身が法の上に立っていると認識するようになる場合があると指摘しています。このような職業的人格の形成は、個人の資質だけでなく、組織の職業文化に大きく依存すると考えられます。日本においても警察の職業文化は確認されており、法執行や治安維持の経験が、警察官の権威主義的な性格を強化しているという報告があります。

世界的な発生事例

アメリカ合衆国

アメリカ合衆国では、警察による殺傷能力のある武器の使用が大きな問題となっています。ワシントンポスト紙の発表によると、2019年には1,004人が警察によって射殺されました。

警察官が特定の人種に対して過度な疑惑を抱く人種プロファイリングによって、人種的マイノリティが警察の暴力の対象となりやすいという問題も存在します。2016年のデータでは、100万人当たりの警察による射殺人数は、ネイティブ・アメリカンが最も多く、次いで黒人、ヒスパニック系の順となっています。

過去には、アルジェ・モーテル事件、ロドニー・キング事件、トレイボン・マーティン射殺事件、エリック・ガーナー窒息死事件、マイケル・ブラウン射殺事件など、数々の事件が発生しており、これらの事件を契機に、抗議運動ブラック・ライヴズ・マター関連のデモが全米に拡大しました。

日本

日本においても、警察庁が外国人犯罪の深刻さを強調する傾向が見られます。2020年には、渋谷区で在日クルド人男性が警察官に押さえつけられる様子が動画に撮影され、抗議デモが発生しました。

集会参加者に対する警察の暴力

集会の自由が保障されている国においても、デモやストライキなどの政治集会に対して、警察が治安維持の名目で武力を行使する事例が見られます。南アフリカのマリカナ鉱山における労使対立、トルコ反政府運動、香港民主化デモなど、多くの事例で警察による暴力が報告されています。

警官による性暴力

警官による性暴力も深刻な問題です。韓国では富川警察署性拷問事件、日本では神奈川県警の警察官による強姦事件などが報告されています。

警察の暴力は、個人の問題だけでなく、組織構造や社会的な偏見など、様々な要因が複雑に絡み合って発生する問題です。この問題を解決するためには、警察組織の改革、人種差別意識の解消、そして市民社会全体の意識改革が不可欠です。

もう一度検索