5声の協奏曲集 作品9 (アルビノーニ)

トマゾ・アルビノーニ（Tomaso Albinoni, 1671-1751）は、ヴェネツィア出身のイタリア盛期バロック音楽の作曲家です。彼の膨大な作品群の中でも、「12曲の五声の協奏曲集」、作品番号9は特に重要な位置を占めています。この曲集は、イタリア語の原題を『12 Concerti a cinque』といい、1722年に当時の主要な楽譜出版の中心地であったオランダ・アムステルダムのミシェル＝シャルル・ル・セーヌ（Michel-Charles Le Cène）社から出版されました。

アルビノーニは、器楽曲、特に協奏曲の分野で多大な功績を残しました。中でも彼のオーボエ協奏曲は、同時代の作曲家はもとより、後の時代の音楽家たちにも大きな影響を与えたとされています。作品9の協奏曲集は、アルビノーニがオーボエという楽器の可能性を深く追求し、その表現力を最大限に引き出した彼の代表的なオーボエ作品を複数含んでいる点で特筆されます。

この作品集は、異なる独奏楽器のために書かれた全12曲の協奏曲によって構成されています。その多様な楽器編成は、当時の音楽市場における様々なニーズに応えるとともに、作曲家自身の幅広い才能を示すものです。具体的には、以下の3種類の編成による作品が収められています。

ヴァイオリン協奏曲：4曲
オーボエ協奏曲：4曲
2本のオーボエのための協奏曲：4曲

各曲は以下の調性を持っています。

ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調（作品9第1番）
オーボエ協奏曲 ニ短調（作品9第2番）
2本のオーボエのための協奏曲 ヘ長調（作品9第3番）
ヴァイオリン協奏曲 イ長調（作品9第4番）
オーボエ協奏曲 ハ長調（作品9第5番）
2本のオーボエのための協奏曲 ト長調（作品9第6番）
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調（作品9第7番）
オーボエ協奏曲 ト短調（作品9第8番）
2本のオーボエのための協奏曲 ハ長調（作品9第9番）
ヴァイオリン協奏曲 ヘ長調（作品9第10番）
オーボエ協奏曲 変ロ長調（作品9第11番）
* 2本のオーボエのための協奏曲 ニ長調（作品9第12番）

このように、作品9では、ヴァイオリン、オーボエ単独、そして2本のオーボエという3つのソリスト形態が、それぞれ4曲ずつ収録されています。これは、単なる寄せ集めではなく、計画的な構成に基づいて編纂された曲集であることを示唆しています。

特にオーボエのための8曲は、アルビノーニがこの楽器のスペシャリストであったことを改めて証明するものです。独奏オーボエのための協奏曲は、楽器の持つ抒情性や技巧的な側面を引き出し、バロック期のオーボエ作品の規範の一つとなりました。また、2本のオーボエのための協奏曲は、二つの独奏楽器が織りなす対話や応答が見事で、当時のアンサンブル協奏曲の発展においても興味深い作品群です。ヴァイオリン協奏曲も、イタリア協奏曲の伝統を踏まえつつ、アルビノーニらしい洗練された旋律と活気にあふれた楽章構成が特徴です。

作品9がアムステルダムで出版されたという事実は、当時のアルビノーニの国際的な名声の高さを物語っています。イタリア国内だけでなく、北ヨーロッパにおいても彼の作品が高い評価を得ていたことが分かります。この出版を通じて、彼の音楽はより多くの演奏家や聴衆に届けられ、ヨーロッパ各地の音楽シーンに影響を与えました。

今日においても、「12曲の五声の協奏曲集」作品9は、アルビノーニの傑作として頻繁に演奏され、録音されています。特にオーボエ協奏曲第2番ニ短調などの有名な作品は、バロック音楽のコンサートプログラムに欠かせない存在です。この曲集は、アルビノーニの作曲家としての円熟期を示すとともに、18世紀初頭の協奏曲様式の多様性と発展を知る上で非常に価値の高い資料と言えます。彼の旋律創造力、楽器の特性を生かした巧みな書法、そして情感豊かな表現は、時代を超えて多くの音楽愛好家を魅了し続けています。

（注：本記事は提供された情報に基づき記述されています。参考文献や外部リンクに関する情報は割愛しています。）

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