オーボエ協奏曲

オーボエ 協奏曲

オーボエ協奏曲とは、管弦楽などの伴奏を伴い、オーボエを独奏楽器としてフィーチャーした協奏曲形式の楽曲を指します。厳密には「オーボエとオーケストラのための協奏曲」と明記されることもありますが、一般的にはこの形式の作品全般をオーボエ協奏曲と呼称します。

このジャンルは、バロック期に特に多くの作品が書かれ、その後も各時代の作曲家によって多様な作品が生み出されてきました。中でもアントニオ・ヴィヴァルディ、トマゾ・アルビノーニ、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、そしてリヒャルト・シュトラウスによる作品は特に広く知られており、演奏機会も多く、多数の録音が存在します。

主要な作曲家と作品

オーボエ協奏曲を手がけた主な作曲家とその代表的な作品を以下に挙げます。

バロック期
アントニオ・ヴィヴァルディ: 20曲以上もの作品があり、その多作ぶりが際立ちます。有名な協奏曲集『和声と創意の試み』に収められた第9番（RV 454）や第12番（RV 449）がよく知られています。
トマゾ・アルビノーニ: こちらも多数の作品を残しており、特に作品9『5声の協奏曲集』の第2番が最も有名です。この作品集には1本のオーボエだけでなく、2本のオーボエのための作品も含まれます。
アレッサンドロ・マルチェッロ: ニ短調の作品が知られていますが、ハ短調版も存在するため、楽譜を入手する際には確認が必要です。
ゲオルク・フィリップ・テレマン: 数多くの作品があり、通常のオーボエのほか、オーボエ・ダモーレのための協奏曲も手がけています。
ヨハン・セバスチャン・バッハ: 直接オーボエ協奏曲として書かれた作品は少ないですが、現在チェンバロ協奏曲として知られる作品の中には、元々オーボエを含む別の編成で書かれたと推測されるものがあります。特に『オーボエ、ヴァイオリン、通奏低音のための協奏曲』BWV 1060aは、その復元版としてよく演奏されます（ニ短調とハ短調の版があります）。
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル: 3曲の独奏協奏曲があります。また、合奏協奏曲作品3でもオーボエが重要な役割を担っています。

古典派・ロマン派
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト: ハ長調 K. 314 (285d) が代表作であり、オーボエ協奏曲の傑作として不動の地位を占めています。
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン: 真偽不明の偽作が存在することが指摘されています。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン: 1曲作曲したとされますが、現在は散逸しており、緩徐楽章の一部スケッチが残るのみです。
ヴィンチェンツォ・ベッリーニ: 変ホ長調の作品が1曲あります。
ガエターノ・ドニゼッティ: コーラングレ協奏曲のほか、オーボエ協奏曲も手がけましたが、こちらは未完で、第2楽章のみが「オーボエとピアノのためのアンダンテ」として残されています。

近現代
リヒャルト・シュトラウス: 晩年に書かれたニ長調の作品は、モーツァルト作品と並んでレパートリーの重要な位置を占めています。
レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ: イ短調の作品があります。
ジャック・イベール: オーボエと弦楽合奏のための協奏交響曲を作曲しています。
クシシュトフ・ペンデレツキ: オーボエと室内管弦楽のための協奏曲を手がけています。
ジャン・フランセ: オーボエとオーケストラのための「花時計」は、時計の針の動きや花の開花をイメージした個性的な作品です。
武満徹: オーボエ（またはオーボエ・ダモーレ）を含む多重協奏曲をいくつか作曲しています。
日本の作曲家: 外山雄三や長生淳などもオーボエ協奏曲を創作しています。

編曲された作品について

「オーボエ協奏曲」として知られていても、原曲がオーボエのために書かれたものではない場合があります。

ドメニコ・チマローザ: 「チマローザのオーボエ協奏曲」は、実際にはアーサー・ベンジャミンがチマローザのチェンバロ・ソナタから編曲したものです。
アルカンジェロ・コレッリ、ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ: サー・ジョン・バルビローリが既存の楽曲からオーボエ協奏曲として編曲した版が存在します。

オーボエを含む多重協奏曲

オーボエが他の独奏楽器と共に活躍する協奏曲も多数存在します。

フランツ・ヨーゼフ・ハイドン: オーボエ、ファゴット、ヴァイオリン、チェロのための協奏交響曲 Hob. 1/105があります。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト: オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと管弦楽のための協奏交響曲とされる作品がありますが、原譜は紛失しており、真偽には議論があります。
アントニオ・サリエリ: フルートとオーボエのための協奏曲や、オーボエ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲があります。
ヴィトルド・ルトスワフスキ: オーボエとハープのための二重協奏曲は、ハインツ・ホリガーの委嘱によって書かれた有名な作品です。
尹伊桑（ユン・イサン）: こちらもホリガーの委嘱によるオーボエとハープのための二重協奏曲があり、七夕を題材にしています。

オーボエ協奏曲は、バロック期の華やかなスタイルから現代の多様な表現まで、幅広い時代の音楽語法によって書かれており、オーボエの叙情的かつ技巧的な魅力を存分に引き出すレパートリーとして、世界中の奏者や聴衆に愛されています。

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