5-メチルウリジン

5-メチルウリジン (5-methyluridine)

概要

5-メチルウリジンは、ribosylthymineあるいはribothymidineとしても知られる、メチル化されたヌクレオシドの一種です。ヌクレオシドとは、核酸（DNAやRNA）の基本的な構成要素であり、糖（リボースまたはデオキシリボース）と塩基が結合してできた分子を指します。5-メチルウリジンは、ウラシル塩基の5番目の炭素にメチル基（-CH₃）が結合した「チミン」と呼ばれる塩基が、リボースという糖と結びついた構造を持っています。

この分子は、生体内の核酸中に普遍的に多量に見られる主要なヌクレオシドとは異なり、特に転移RNA（tRNA）の中に少量だけ存在する「修飾ヌクレオシド」として位置づけられています。

構造とチミジンとの関係

5-メチルウリジンの構造は、ウラシル塩基にメチル基が付加されたチミンという塩基と、リボース糖が結合したものです。注目すべき点は、この分子の糖部分がリボースであることです。

一方、DNAを構成する主要なヌクレオシドの一つであるチミジン（thymidine）は、チミン塩基にデオキシリボースという別の糖が結合したものです。デオキシリボースは、リボースの構造の一部が変化した糖であり、この糖の違いがヌクレオシドが組み込まれる核酸の種類（RNAかDNAか）と密接に関連しています。したがって、5-メチルウリジンはRNAに関連する分子であり、チミジン（デオキシチミジン）はDNAに関連する分子として明確に区別されます。両者は同じ塩基部分を持ちながら、糖の種類が異なるという関係にあります。

生体内での役割

5-メチルウリジンは、主に転移RNA（tRNA）分子内に見出される修飾ヌクレオシドです。tRNAは、タンパク質合成の際に、メッセンジャーRNA（mRNA）の遺伝暗号に基づいて特定のアミノ酸を運搬する役割を担っています。

tRNA分子には、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジンといった主要な4種類のヌクレオシド以外にも、シュードウリジン、イノシンなど、100種類以上に及ぶ多様な修飾ヌクレオシドが含まれていることが知られています。これらの修飾ヌクレオシドは、tRNAの機能や構造の維持に非常に重要です。例えば、tRNA分子の正確な立体構造の形成・維持、リボソームとの適切な相互作用、そしてコドン（mRNA上の遺伝暗号単位）の正確な認識などに不可欠な役割を果たします。

5-メチルウリジンも、tRNA分子内の特定の部位に導入されることで、これらの機能的な役割の一部を担っていると考えられます。具体的な機能的意義は、tRNAの種類や修飾の位置によって異なりますが、tRNAの安定性向上や翻訳の精度向上に寄与する可能性が指摘されています。

命名法と略号

核酸やヌクレオシドの命名および略記法は、文脈によって注意が必要です。一般的に、リボ核酸（RNA）の基本的な構成単位であるウリジン、シチジン、アデノシン、グアノシンはそれぞれU, C, A, Gと略されます。一方、デオキシリボ核酸（DNA）の構成単位であるデオキシウリジン、デオキシシチジン、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、そしてチミジンは、それぞれdU, dC, dA, dG, dTと略記されるのが標準的です。

しかし、5-メチルウリジン（リボシルチミン）に関しては、核酸命名法の規約において、特にリボ核酸に関連する文脈で、単に「T」という略号が用いられることがあります。これは、ウラシル塩基にメチル基が付加された構造を持つチミンという塩基が、リボースと結合していることに由来します。

一方で、DNAの構成要素であるチミジン（デオキシチミジン）も、しばしば文脈によって単に「T」と略記されることがあります。したがって、略号「T」を目にした際には、それがRNA中の5-メチルウリジン（リボシルチミン）を指しているのか、それともDNA中のチミジン（デオキシチミジン）を指しているのかを、前後の記述内容や研究対象がRNAかDNAかといった点から慎重に判断する必要があります。

出典

本記事は、「リボチミジン」の項目を参照し、岩波生物学辞典（第4版、岩波書店）の内容に基づき作成されています。

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