シチシン

シチシン(Cytisine)とは

シチシンは、マメ科の植物、特にキングサリ属やエニシダ属などに含まれる有毒なアルカロイドです。その化学構造はニコチンと類似しており、ニコチン性アセチルコリン受容体に対して強い結合能を持つため、同様の薬理効果を発揮します。毒性も持ち合わせており、過剰に摂取すると呼吸を妨げ、最悪の場合には死に至ることもあります。

シチシンの源

シチシンは、以下のマメ科植物に含有されています。

キングサリ属(Laburnum)
アナギリス属(Anagyris)
センダイハギ属(Thermopsis)
[エニシダ属]
ヒトツバ[エニシダ属]
レダマ属(Retama)
クララ属(Sophora)

また、マメ科以外では、ジャケツイバラ科のケンタッキーコーヒーノキにも含まれています。

特にSophora chrysophyllaは、ほとんどの動物にとって致死量となるほどのシチシンを含んでいます。しかし、一部の動物、例えばキムネハシブトやモンウスベニオオノメイガは、シチシンの毒性の影響を受けずにSophora chrysophyllaを食べることができます。モンウスベニオオノメイガの幼虫は、シチシンを体内に隔離することで自身を毒から守り、その警告色によって捕食者からも身を守っていると考えられています。

シチシンの利用

シチシンはアセチルコリン作動薬として作用し、ニコチン性アセチルコリン受容体に強く結合します。この特性から、医薬品として喫煙の治療に利用されています。特に、Cytisus laborinumの種子から抽出されたシチシンは、ブルガリアの製薬会社Sopharma AD社によってTabexという商品名で販売され、旧社会主義国を中心に40年以上にわたって使用されてきました。Tabexは1964年にブルガリアで初めて販売され、その後、社会主義国で広く普及しました。

シチシンと類似の構造と薬理効果を持つ合成薬であるバレニクリンは、2006年に禁煙薬として認可されています。

禁煙治療薬としての効果

740人の患者を対象としたランダム化比較試験の結果、シチシンはプラセボと比較して高い禁煙効果を示すことが明らかになりました。12ヶ月後のニコチン自制効果は、プラセボ群が2.4%であったのに対し、シチシン群では8.4%でした。また、2013年のメタアナリシスでは、シチシンはアメリカ合衆国で認可されている他の禁煙薬と同程度の効果を持つことが示唆されました。

2014年には、シチシンと行動支援を組み合わせた治療法と、ニコチン代替療法（ニコチンパッチやガムなど）と行動支援を組み合わせた治療法との比較臨床試験が行われました。その結果、シチシン群はニコチン群よりも開始後1ヶ月時点での禁煙継続率が高かったものの（シチシン群40.3% vs ニコチン群31.0%）、有害事象の発現率も高いことが示されました（シチシン群31.1% vs ニコチン群20.5%）。

その他

エニシダなどシチシンを含む植物は、陶酔感や色彩感覚の向上などの効果が報告されており、娯楽目的で使用されることがあります。しかし、吐き気、痙攣、心臓痛、頭痛などの副作用も伴い、大量に摂取すると呼吸不全によって死亡する危険性もあります。

外部リンク

Shaman Australis Cytisine pharmacology and information on substance availability in various plants.
Cytisine Is Cheap And Effective In Helping Smokers Quit Information on treatment of tobacco smoking
Tabex official website

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