6ストローク機関

6ストローク機関：驚異的な燃費効率を実現した革新的エンジン

6ストローク機関は、通常の4ストローク機関とは異なる動作サイクルを持つ内燃レシプロエンジンです。1サイクルを6つの行程で構成することで、高い圧縮比と燃焼効率を実現し、圧倒的な燃費性能を達成しています。

燃費競技での輝かしい実績

6ストローク機関が世界的に注目を集めるようになったのは、低燃費を競う競技での活躍がきっかけです。1980年代初頭、日本における燃費競技の隆盛とともに、本田技研工業鈴鹿製作所の社員を中心に結成されたプライベートチーム「TEAM1200」が、ガソリンエンジンを搭載した6ストローク機関で数々の記録を樹立しました。

TEAM1200は、1985年から1987年にかけてシェル・マイレッジマラソン日本大会で3連覇を達成。1987年には977.0km/lという驚異的な燃費を記録しました。さらに、1988年にはイギリスのシルバーストン・サーキットで開催された世界大会で、大手自動車メーカーのワークスチームを抑え、2,268km/lの世界新記録を樹立し優勝。その後も世界大会で活躍し、1990年までに3連勝、1995年と1996年も優勝を果たしました。

日本のエコノパワー燃費競技でも、TEAM1200は3,014.71km/l（1994年）や3,337km/l（1996年）といった、世界記録を更新する驚異的な燃費を達成しました。これらの成果により、6ストローク機関は、その高い燃費性能を世界に知らしめました。

2003年には、埼玉県立小松原高等学校の自動車部が、ホンダ・スーパーカブのエンジンをベースに改造した6ストローク機関を搭載した車両で、HONDAエコノパワー燃費競技全国大会で優勝。2,410.51km/lという高い燃費を達成し、自動車技術会誌でも紹介されるなど、6ストローク機関の技術は広く知られるようになりました。

6ストローク機関の動作原理

6ストローク機関は、吸入、圧縮、燃焼、排気の4行程に加え、「掃気吸入行程」と「掃気排気行程」の2行程が追加されています。クランクシャフトは1サイクルで3回転します。

1. 吸入行程: ピストンが下降し、燃料と空気の混合気を燃焼室に吸入します。
2. 圧縮行程: ピストンが上昇し、混合気を圧縮します。
3. 燃焼行程: 上死点付近で混合気に点火され、燃焼ガスがピストンを押し下げます。
4. 排気行程: ピストンが上昇し、燃焼ガスを排気します。
5. 掃気吸入行程: ピストンが下降し、新鮮な空気を燃焼室に吸入します。燃費競技車では、この行程で排気バルブを開き、排気の一部を再導入する内部EGR（排気ガス再循環）を行う場合があります。これは、バルブの数を削減し、4ストローク機関からの改造を容易にするため、また、短時間しかエンジンを稼働させない燃費競技においてエンジンの冷却を防ぐ効果があります。
6. 掃気排気行程: ピストンが上昇し、掃気を排出します。

これらの行程により、燃焼室内の温度管理が効率化され、高い圧縮比を実現できます。その結果、より多くのエネルギーを取り出し、高い燃費性能に繋がります。

6ストローク機関の現状と将来性

6ストローク機関は、その高い燃費効率から、低燃費競技において大きな成功を収めました。しかし、他の実用的な用途への適用例は少ないのが現状です。その理由としては、構造の複雑さや製造コストの高さが挙げられます。

しかし、環境問題への関心の高まりとともに、高効率な内燃機関への需要はますます増加しています。今後、技術革新やコスト削減が進めば、6ストローク機関が様々な用途で活用される可能性も秘めていると言えるでしょう。

参考文献

本文中に記載されている文献情報は省略。

もう一度検索