70式戦車回収車

70式戦車回収車

70式戦車回収車（ななまるしきせんしゃかいしゅうしゃ）は、陸上自衛隊において使用された装甲回収車両です。この車両は、61式戦車の開発と共に登場し、戦場での戦車の回収や牽引作業を目的として設計されました。

開発の背景

陸上自衛隊では、61式戦車の運用開始を受けて、それまでのM32戦車回収車の代替として新たな回収車両を開発することを決定しました。1969年には試作車が完成し、1970年には70式戦車回収車として正式に制式化されました。しかし、当時陸上自衛隊の予算は61式戦車の生産に優先的に振り分けられたため、70式戦車回収車の生産計画は厳しい状況にありました。オイルショックの影響もあり、最終的には試作車1輌を含む5輌のみが生産され、実際に部隊に配備されたのは4輌という限られた数量でした。

部隊での使用

70式戦車回収車は、1970年代から1980年代にかけて陸上自衛隊で広く知られていました。その理由は、特定の部隊だけに配備されるのではなく、全国の61式を装備した部隊にたらい回し的に使用されていたため、比較的多くの隊員が目にする機会があったからです。少数生産であったものの、その存在感は大きく、一部の部隊では本部の予備車両として活用され、さらにはM32戦車回収車が耐用年数に達するまで使用されることもありました。

車両の特徴

70式戦車回収車は、61式戦車の車体を流用しており、外見上は砲塔がなく、代わりに角型の戦闘室が設置されています。前面にはドーザーブレードが装備され、回収作業を効率的に行うためのウインチやAフレーム型のクレーンも搭載されています。また、戦闘中に備えた防御能力として、12.7mm重機関銃M2の銃架を備えており、煙幕弾を投射するための64式81mm迫撃砲も搭載されています。これらの装備は、M32戦車回収車と類似しており、各種作業において高い機能性を発揮する仕様となっています。

ただし、走行性能や操作性については、61式同様に一部の隊員からは難しいとの意見も寄せられていました。特に、変速装置の操作が扱いづらく、操縦が苦手という声もありました。その一方で、専用に開発されたウインチは非常に高性能で、国産のものとしては最小サイズながら牽引力や最大吊上重量が優れていました。これにより、70式戦車回収車は、困難な戦場環境においてもその能力を最大限に発揮しました。

最終的な運用

74式戦車が開発され、その派生型として78式戦車回収車が登場すると、70式は戦車部隊から引き揚げられました。その後は主に特科の自走砲部隊で活躍し、陸上自衛隊の歴史の中で重要な役割を果たしました。このように、70式戦車回収車は、その生産数の少なさにもかかわらず、陸上自衛隊の中で特別な存在感を有する装備となりました。

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