75式ドーザ

75式ドーザ

75式ドーザ（ななごうしきドーザ）は、日本の陸上自衛隊が運用する装甲付きのブルドーザーです。これは、戦闘地域や災害現場など、危険を伴う環境下で隊員を保護しつつ土木作業を安全に行うために特別に開発されました。その堅牢な構造と機能から、部隊内では単に「装甲ドーザ」や「ドーザ」とも呼ばれています。製造は国内メーカーである小松製作所が担当しました。

開発経緯

本車の開発は、戦場のような厳しい状況で活動するための土木車両が必要とされたことから始まりました。従来の民生用ブルドーザーでは、必要な防御力や迅速な移動能力が不足していたため、装甲を備えた中型ブルドーザーとして、陸上自衛隊の技術研究本部と小松製作所が共同で開発を進めました。1969年（昭和44年）に開発が開始され、約6年後の1975年（昭和50年）に陸上自衛隊の正式な装備品として採用されました。合計で約100両が生産されています。

主な特徴

75式ドーザの設計には、戦場での運用を考慮した独自の要素が多く組み込まれています。

高い機動性: 一般的なブルドーザーの最高速度が10～15km/h程度であるのに対し、75式ドーザは路面で最大45km/hという比較的高い速度での走行が可能です。これは、迅速な展開や陣地変換といった戦場での要求に応えるための設計です。足回りには、戦車と同様に履帯（無限軌道）が採用され、衝撃吸収のためトーションバー式のサスペンションが備わっています。
前後二方向の運転台: 車両の大きな特徴として、前後に二つの操縦席が配置されています。土砂の押し出しなど、ブルドーザー本来の作業を行う際は排土板（ブレード）側の運転台を使用します。一方、高速で移動する際は、排土板側を前方にすると視界が限られるため、反対側の運転台で操縦します。排土板側の運転台は旋回式で、作業や移動の向きに合わせて回転させることができます。車両の前後にライトや方向指示器も取り付けられています。
多機能な排土板: 車体前面の排土板は中央で二つに分割された構造になっており、それぞれ独立して角度を調整できます。これにより、ブレードをV字形に開く「外反」や、逆V字形に閉じる「内傾」といった特殊な作業が可能となり、多様な土砂や障害物に対応できます。また、公道などを輸送する際には、排土板の幅を狭めることで車両規定に適合させることができます。エンジンは排土板側に配置されています。
防御力: 車体には装甲が施されており、小銃弾や砲弾の破片などから搭乗員や車両の主要部を防御します。操縦席の窓には防御用のシャッターが備わっており、危険な状況ではこれを下ろして安全を確保できます。
* その他の性能: 最小回転半径は約6.5メートルで、比較的狭い場所での旋回が可能です。最大約60％（約31度）の傾斜を持つ坂道を登る能力や、水深約1メートルまでの浅い川などを渡る渡渉能力も備えています。

部隊での運用と実績

75式ドーザは、配備開始当初は主に建設工兵部隊である施設団に重点的に配備されていました。その後、より新しい「施設作業車」の導入が進んだことに伴い、近年は方面隊直轄の施設部隊などへの配置転換が進められています。しかし、施設作業車の年間調達数が限られている状況もあり、本州以南に所在する陸上自衛隊の師団や旅団の施設部隊では、現在も75式ドーザが第一線の主要装備として運用されています。

装甲を持つ建設車両であるという特性から、国内の災害派遣や海外での国際平和協力活動にも投入され、その能力を発揮しました。具体的には、1990年代に発生した普賢岳噴火に伴う土砂災害において、危険な火砕流堆積地での作業に使用されました。また、カンボジアでのPKO（国連平和維持活動）においても、地雷の危険が残る地域での道路啓開や陣地構築などに貢献し、隊員の安全確保と作業遂行に重要な役割を果たしました。

後継機への移行

長年にわたり陸上自衛隊の土木作業を支えてきた75式ドーザですが、車両自体の老朽化が進み、また計画されていた施設作業車の普及が想定よりも遅れたことから、新たな装甲ドーザの開発が必要となりました。その結果、後継機として「ドーザ（装甲付き）」の開発が進められ、2023年（令和5年）に「23式ドーザ」として正式に採用されています。今後は、順次75式ドーザから23式ドーザへの更新が進んでいく見込みです。

関連情報

75式ドーザは、その特徴的な外見から、フィクション作品に登場することもあります。例えば、日本の特撮映画「ゴジラvsビオランテ」や「ゴジラvsキングギドラ」では、自衛隊の車列の一部として確認できます。また、架空戦記小説「超空自衛隊」では、タイムスリップした陸上自衛隊施設科部隊の装備として描写されています。

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