8 cm PAW 600

8 cm PAW 600について

8 cm PAW 600（8cm Panzerabwehrwerfer 600）は、第二次世界大戦の時期にナチス・ドイツが製造した対戦車砲の一つであり、正式な名称は「8センチ対戦車発射器 600型」です。この兵器は、実質的には大型の擲弾発射装置、いわゆる低圧砲として設計されました。開発時には8H63またはPaK 8H63といった名称でも呼ばれることがあります。

開発の背景

戦車の装甲が厚くなるのに伴い、従来の牽引式対戦車砲が大型化・重量化していく中で、この8 cm PAW 600は軽量化を実現することが目的とされました。特に、戦闘の現場で機動性を確保するために軽く、小さな反動で効果的な発射が可能な武器として開発されたのです。

技術的特徴

PAW 600はラインメタル社によって設計され、口径は81.4mm、迫撃砲と同じサイズの砲弾を採用しています。高低圧理論を活用することで、小さな反動ながらも強力な射撃が可能です。この技術は、少量の装薬を用いて小さな第1段室で高圧を生じさせ、そのガスを第2段室に送り込むことで、弾丸を低圧下のガスの力で押し出す仕組みです。

砲弾は特別な設計の迫撃砲弾型であり、弾頭と尾翼の境に設けられた噴出孔板によって、普通の火砲よりも砲弾にかかる圧力を減少させています。これにより、薄い外殻でも十分な炸薬を充填可能となり、威力を高めることに成功しました。砲身は肉薄な滑腔式であり、駐退機も簡素な構造です。その結果、本体はわずか650kgであり、同じ時代のPak 40 7.5cm対戦車砲の半分以下の重量となります。

経済的なメリット

PAW 600は、既存の部品を流用して構成されることが重視されました。これは、開発費用を大幅に削減するものであり、他の対戦車砲と比べて非常に安価でした。具体的には、3.7 cm PaK 36が5,730ライヒスマルク、PaK 40が12,000ライヒスマルクの価格であったのに対し、PAW 600はたった2,050ライヒスマルクでした。これにより、戦場において量産しやすい武器となりました。

性能と運用

しかし、PAW 600にはいくつかの欠点もありました。初速は520m/sと遅く、そのために成形炸薬弾である8 cm W Gr Patr H1 4462弾を使用しなければならず、この弾は弾頭の重量が2.7kgで、垂直に立てた装甲鋼板に対しては145mmの貫通力があります。とはいえ、射撃精度は低く、有効射程も750mと限られていたため、対戦車兵器としては決して強力とは言えませんでした。このような制約の中で、PAW 600は260門が完成し、主に第30装甲擲弾兵連隊と第31装甲擲弾兵連隊に配備されました。

まとめ

PAW 600は、その軽量化と経済性から第二次世界大戦中に重要な役割を果たした対戦車砲でしたが、一方で性能面では改善の余地があったと言えます。この兵器は、戦争の技術革新の一端を担った存在として、軍事史に名を刻むこととなりました。

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