9つの聖書日課とクリスマスキャロル

「9つの聖書日課とクリスマスキャロル」(The Nine Lessons and Carols)は、クリスマスを祝う西方教会の伝統的な礼拝形式です。聖書の9つの箇所が朗読され、その合間にクリスマスキャロルや聖歌、詩編が歌われる、荘厳で美しい儀式となっています。

この礼拝形式は、1880年に英国聖公会カンタベリー大主教のエドワード・ベンソンによって考案されました。当初は英国聖公会で用いられましたが、現在では世界中の多くの教会でクリスマスイブまたはその周辺の時期に行われています。特に、聖公会や英語圏のカトリック教会で広く受け継がれ、愛されています。日本でも、聖公会を中心にこの形式の礼拝が行われています。

礼拝の中心となるのは、旧約聖書と新約聖書から選ばれた9つの聖書箇所からの朗読です。これらの箇所は、クリスマスの物語を様々な視点から照らし出し、救済への神の計画を雄弁に語ります。具体的には、創世記、イザヤ書、ルカによる福音書、マタイによる福音書、ヨハネによる福音書からの抜粋が用いられます。それぞれの朗読箇所は、救済の歴史における重要な出来事や預言、そしてイエス・キリストの降誕への期待を表現しています。

聖書朗読の合間には、クリスマスキャロルや聖歌が歌われます。これら聖歌は、朗読された聖書の言葉に寄り添い、喜びや希望、そして信仰の深さを表現するものです。歌われる聖歌は、教会や地域によって多少の違いがありますが、クリスマスの伝統的な歌や現代の賛美歌などが選ばれることが多いです。それぞれの聖歌が、朗読された聖書の言葉と共鳴し、礼拝の雰囲気をさらに深めていきます。

特に有名なのが、イギリスのキングスカレッジ・チャペルで行われる「9つの聖書日課とクリスマスキャロル」です。毎年クリスマスの朝、このチャペルでの奉仕の様子は世界中に放送され、多くの人々に感動を与えています。美しい聖歌隊の歌声と、荘厳なチャペルの雰囲気は、クリスマスの精神を世界中に届ける象徴となっています。この放送は、クリスマスの伝統として定着しており、世界中の人々がこの放送を通してクリスマスのメッセージに触れる機会を得ています。

「9つの聖書日課とクリスマスキャロル」は、単なる宗教儀式ではありません。それは、クリスマスの真の意味を深く考え、神への感謝と希望を分かち合う、特別な時間です。聖書の言葉と聖歌が織りなす調和は、参加者たちの心に深い感動と平安をもたらし、クリスマスの喜びをより一層高めてくれるでしょう。

9つの聖書箇所の朗読箇所は以下の通りです。

創世記 3:8-19
創世記 22:15-18
イザヤ書 9:2 & 6-7
イザヤ書 11:1–3a & 4a & 6–9
ルカによる福音書 1:26–35 & 38
ルカによる福音書 1:1 & 3–7
ルカによる福音書 2:8–16
マタイによる福音書 2:1-12
* ヨハネによる福音書 1:1-14

これらの聖句は、神と人間との関係、救いの約束、そしてキリストの降臨への期待を象徴的に示しています。それぞれの箇所が、クリスマスの物語を多角的に理解するための重要な要素となっています。

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