9月12日クーデター

1980年9月12日クーデター

1980年9月12日、トルコで発生した軍事クーデターは、トルコの政治史における重要な出来事として位置づけられている。このクーデターは、国家の安定を求める動きの中で、軍部が直接政治に介入した結果生じたものだ。参謀総長ケナン・エヴレンをはじめとする軍首脳が、この行動を決定した背景には、1970年代末に見られた政治的混乱や社会的対立があった。

クーデターの背景

1970年代のトルコは、政治的な対立によるテロ行為が激化し、経済も深刻な苦境にあった。インフレ率が3桁に達し、高失業率が慢性的になり、政府は有効な対策を講じることができなかった。公正党と共和人民党という二大政党間の対立や、さまざまな少数政党が政治のキャスティングボートを握る状況は政局をますます複雑化させていた。

選挙ではどちらの大政党も過半数の議席を獲得できず、その結果、数回の政権交代が短期間に繰り返される不安定な状況が続いていた。過激派組織による暴力も増加し、政治的暴力の犠牲者数は年々増加。1978年には、民族主義者行動党のメンバーによる大規模な虐殺事件が発生し、治安は悪化の一途を辿った。

クーデターの実行

こうした状況を背景に、軍部は1979年の夏ごろからクーデター計画を立て始め、政府に対し警告を発する。しかし、政府が期待するような状況改善が見られず、1980年9月12日、軍は動き出す。軍は、全土に戒厳令を発令し、憲法を停止、議会と政府の機能を解散の上、国家安全保障評議会を設立し、国政を一手に掌握することとなった。

エヴレンは、国営放送でクーデターの成功を発表し、自らを国家元首として任命。続いて、約65万人が拘束され、政治的抑圧が強化されていく。多くは左翼活動に関与した者であり、大学教授や労働組合関係者なども標的となった。治安維持を目的とした強硬策が取られ、政治的テロの発生件数は著しく減少したが、拘束された人々の中には拷問や失踪者も多く報告され、人権侵害が広がった。

新憲法と民政への移管

1981年、軍政当局は新憲法を作成し、1982年に国民投票を経て承認される。この新憲法は、大統領や行政府に権限を集中させ、言論や労働組合活動に対する制約を強化する内容だった。また、国家安全保障会議の権限も増強され、軍部が文民政府に介入する道を開いた。

民政移管は1983年に実施され、クーデター前の旧政党は解散され、新たな政党のみが選挙に参加できる厳しい条件のもとで行われた。これにより、新たに成立した祖国党が議会の単独過半数を制し、トゥルグト・オザルが首相に就任。軍は権力を陰で握り続け、経済政策もウルス内閣で推進されることとなった。

クーデターに対する評価

軍事クーデターは、一時的には社会や経済の安定をもたらしたが、その影響は長期的にトルコの政治に暗い影を落としている。1982年憲法によって確立された政治体制は、近年の民主化の要求に対して適応できず、批判の的となった。また、国際的にも人権侵害の問題が指摘され、時には批判的な声も上がった。

クーデターは、トルコの歴史における重要な事件として、さまざまな影響を与え続けている。

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