98ローカルバス

98ローカルバス：PC-9821シリーズを支えた高速拡張バス規格

1993年、NECはPC-9821A-MateシリーズおよびSC-9821A向けに、98ローカルバスという32ビット高速バス規格を開発しました。MLバスとも呼ばれるこの規格は、NEC自身に加え、カノープス（現グラスバレー）、メルコ（現バッファロー）、住友金属工業、サピエンスのわずか4社のみが対応製品を開発した、希少な拡張バスです。

しばしばVLバス（VESAローカルバス）と混同されますが、98ローカルバスはNESA（New Extend Standard Architecture）バスのコネクタを使用しており、電気的特性においてVLバスを上回っていました。NESAバスのコネクタは、クロック周波数に関わらず接続できるバス数が2本までに制限されているため、電源や信号の安定性でVLバスを凌駕していたのです。また、PC-9821Af/AnといったPentium搭載機種にも搭載されましたが、ブリッジ変換が必要だったため、本来の性能を完全に発揮することはできませんでした。

規格の詳細

98ローカルバスは、NESAバスの機能を簡略化したサブセット規格です。バス調停機能を簡素化し、リソース自動設定機能を削除することで、よりシンプルな設計を実現しました。信号線配列やコネクタ、ボード形状はNESAバスとほぼ同一でしたが、相互互換性はありませんでした。そのため、98ローカルバス対応拡張ボードには、NESAバススロットに誤って挿した場合の故障を警告するシールが貼られていました。

主な規格は以下の通りです。

32ビットアドレス空間、データバス幅
25MHz、30MHz、または33MHz駆動
理論最大転送帯域：133MB/秒
ボードサイズ：奥行き17cm、幅15cm、厚さ2.5cm
Cバススロット間にコネクタを配置。Cバスボードとは互換性がないものの、同一スロットを使用可能。
エッジコネクタには、筐体を開けずに抜き差しできるようレバーが装着。

対応製品

98ローカルバスに対応した製品は、主に以下の4社から販売されました。

NEC: 多様な周辺機器を開発。
カノープス: 高速グラフィックボードの他、業務用サウンドボードやA/D変換ボードなどを製造。
メルコ: ビデオボードのみを製造。
住友金属工業: ビデオボードのみを製造。Windows 95発売前に撤退したため、主にWindows 3.1環境で使用された。
サピエンス: ビデオボードのみを製造。

対応製品の種類としては、グラフィックアクセラレータ、ビデオキャプチャボード、PCM入力ボード、ハイレゾ互換ボードなどが挙げられます。これらの製品は、PC-9821シリーズのマルチメディア機能拡張に大きく貢献しました。

98ローカルバスの意義

98ローカルバスは、PC-9821シリーズの拡張性を高める重要な役割を果たしました。VLバスに比べて優れた電気的特性を持つことで、安定した高速データ転送を可能にし、高性能なグラフィックボードやサウンドボードなどの開発を促しました。しかし、対応メーカーが限られていたことや、後継規格の登場により、その歴史は比較的短期間に終わりました。それでも、PC-98シリーズの進化において重要な役割を果たした拡張バス規格であることは間違いありません。

参考文献

『NECパーソナルコンピュータ PCシリーズ 総合プロダクトガイド 1995-Autumn』、発行：日本電気、発売：新紀元社、1995年 ISBN 4-88317-046-2

関連用語

Cバス、NESA、PCI Express、PCI、AGP、EISA、ISA、MCA、VESAローカルバス、XTバス、PC-9821シリーズ

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