New Extend Standard Architecture

NESA (Eバス) - NEC PC-98シリーズの32ビット高速バス規格

NESA、通称Eバスは、[日本電気]が1990年にPC-98シリーズの高性能モデルであるPC-H98シリーズ向けに開発した32ビットの高速バス規格です。PC-98シリーズの拡張性を飛躍的に向上させる役割を担いました。EISA(Extended Industry Standard Architecture)をベースに設計されていますが、NEC独自の改良が加えられており、単なる互換性にとどまらない独自性を持っています。

開発背景

1980年代後半、x86プロセッサの32ビット化(Intel 80386)に伴い、既存の16ビットバスでは処理能力のボトルネックとなっていました。IBM PC/AT互換機|PC_AT互換機市場では、IBMのMCA(Micro Channel Architecture)とEISAの競争が繰り広げられましたが、PC-98シリーズは異なる道を歩みました。NECはEISAの開発にも関与していたため、その技術を基に、PC-98シリーズ独自の32ビットバスを開発することが可能だったのです。

NECはEISAの優れたバス調停機能やリソース設定機能をNESAに採用しつつ、EISAが抱えていたISAとの互換性のための複雑な設計を回避。独自の新型コネクタを採用することで、よりシンプルで効率的なバスアーキテクチャを実現しました。この設計は、EISAとMCA両方の深い理解と、自社開発のインテリジェントコントローラの技術力があってこそ成し遂げられたものです。PC-H98 model 70への搭載を皮切りに、NESAは市場に投入されました。

NESAの技術仕様

NESAは、拡張ボードや周辺機器に搭載されたインテリジェントコントローラによって、高度なバス調停と、NESA-FOと呼ばれる自動リソース設定機能を実現していました。レベルトリガ割り込み機能も備え、デバイス間の割り込み信号線の共有を可能にしました。

電気的な設計にも工夫が凝らされており、GNDや+5V電源線をデータ信号線間に配置するなど、ノイズ対策が徹底されています。クロック信号線の周囲にはGND線を配置することで、他の信号線への干渉を最小限に抑える設計も特徴です。

主な仕様は以下の通りです。

32ビットアドレス空間、32ビットデータバス
8MHz駆動、33MB/秒の最大転送帯域
180ピンコネクタ (2つの90ピンコネクタを並列配置)
拡張ボード寸法：奥行き17cm、幅15cm、厚さ最大2.5cm

NESAはPC-98シリーズのCバスとは互換性がありませんでしたが、専用の32ビットバスコネクタを設けることで、拡張スロットを排他的に利用できるよう設計されています。後継の98ローカルバスと物理的なコネクタ形状は同じですが、電気的な互換性はありません。また、筐体を開けずに抜き差しできるよう、コネクタにはレバーが取り付けられていました。

NESA対応周辺機器

NESAバスに対応した周辺機器は、メモリ、SCSIボード、LANボードなど多岐に渡りました。NEC以外にも、日本マイクロコンピュータなど他社からもNESA対応製品が発売されていました。ただし、PC-H98シリーズとSV-H98シリーズ、N5200シリーズなど機種間での互換性は、ファームウェアの差異により保証されていませんでした。

代表的なNESA対応機器の例を以下に挙げます。

メモリ: PC-H98-B02 (2MB), PC-H98-B08 (4MB)など
SCSIボード: PC-H98-B03, PC-H98-B12, PSB-H9310など
LANボード: PC-H98-B04, PC-H98-B09, PC-H98-B10, PC-H98-B11など
その他: 高速回線アダプタ、CPUボード、ビデオキャプチャボード、プリンタボード、バス増設ボックスなど

まとめ

NESAは、PC-98シリーズの進化に大きく貢献した32ビットバス規格でした。EISAをベースとしながらも、NEC独自の技術と工夫によって、高い性能と信頼性を両立しています。PC-98シリーズの拡張性の向上に大きく貢献した一方で、PC-98シリーズ以外への採用例がなかったことは、その歴史において特筆すべき点と言えるでしょう。NESAの登場は、PC-98シリーズの技術的完成度を示す重要な要素の一つであり、日本のパソコン業界における技術開発の歴史を語る上で欠かせない存在です。

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