9K33

9K33 オサー（SA-8 ゲッコー）

9K33オサー（ロシア語で「スズメバチ」の意）またはNATOコードネームのSA-8 ゲッコーは、ソビエト連邦で開発された短距離防空ミサイルシステムです。本システムは、1960年代に陸上部隊の防空を強化するために設計され、陸・海・空のそれぞれで運用可能とすることを目指して開発が始まりました。

開発の経緯

1960年代初頭、ソビエト軍は短距離の対空戦闘を行うための機動性に優れたミサイルが必要であると認識しました。元々は多様な軍事部門で使用するための統一されたシステムを計画していましたが、開発の過程でその互換性は損なわれていきました。1971年には陸上型が量産に入っており、翌年からソ連陸軍への配備が始まりました。

構造と仕様

9K33の発射システムは、全周式ターレットにミサイル発射装置と管制装置が統合されており、高い自己完結性を持っています。具体的には、目標追尾レーダーやミサイル管制レーダーが左右に配置され、後方にはミサイル発射装置、そして上部には回転式の目標捜索レーダーが搭載されている構造です。捜索レーダーは独立して回転が可能で、30kmの探知距離を有し、目標追尾レーダーは最大で25km、実用的な検知距離は20kmです。

搭載車両はBAZ-5937という6輪駆動のオフロード車両で、浮力を持ち、水上でも移動が可能です。本システムに搭載されるミサイル9M33は、固形燃料の1段式ロケットで、無線指令誘導に加え、光学追尾装置も備えています。ミサイルの有効射程は、目標が高速か低速かによって異なり、最大10kmまでの高い距離性能を持っています。ただし、9K33の発射装置に載せることのできるミサイルは6発のみで、再装填は専用のTZM補給車両によって行われます。

運用と配備

9K33はソ連軍において大量に配備され、さらに東欧のワルシャワ条約機構加盟国にも広く輸出されました。現在でも、シリアやヨルダンなどの国々で運用されています。湾岸戦争や中東の紛争においても実際に使用され、南オセチア紛争ではロシア陸軍とグルジア陸軍の両方がこのシステムを使用しました。1998年に生産は終了しましたが、後継機の9K330トールの配備が進んでいないため、多くの9K33が今でも現役として運用されています。まさに2022年のロシアのウクライナ侵攻においても、このミサイルシステムが実戦で使用された場面が確認されています。

派生型

このミサイルシステムにはいくつかの派生型が存在します。基本型の9K33オサー（SA-8A）に加え、9K33の艦対空ミサイルバージョンである9K33MオサーM（SA-N-4）や、ミサイル発射筒が密閉型の9K33M2オサーAK（SA-8B）など、複数の改良型が開発されています。また、最大射程15kmに達し、電波妨害に対処可能な有線誘導ミサイルを搭載する9K33M3オサーAKM（SA-8B Mod1）も存在します。

利用国

おもな運用国としては、ロシアが550基、アルメニアが80基、ポーランドが64基など多くの国に配備されています。最近ではアルジェリアやリビア、シリアなども含まれ、これまでに20を超える国で運用されています。特に、中東地域においてはさまざまな紛争で活躍してきました。

登場作品

ゲーム分野でも注目され、例えば『エースコンバット アサルト・ホライゾン』ではSRNが使用し、『フィクショナル・トルーパーズ』や『マーセナリーズ』などでも対空車両として登場しています。これにより、9K33オサーは、今もなお多くの人に認識され続けているシステムとなっています。

もう一度検索