9M311

9M311トレウゴリニクは、ロシア語で「三角形」を意味し、ソビエト連邦のKBP器械製造設計局で開発された近距離防空ミサイル/近接防空ミサイルです。NATOコードネームはSA-19 グリスン（Grison）として知られています。

このミサイルは、初期に開発された9M311を原型として、様々な派生型が開発されました。具体的には、艦載型の9M311K（3M87）、輸出型の9M311-1、改良型の9M311M（3M88）、そして9M311-M1と、段階的に発展を遂げました。最終発達型である9M311-M1では、電子対抗手段（ECCM）性能が向上し、敵の妨害電波に対する耐性が強化されただけでなく、射程も10kmに延伸されています。

9M311シリーズの特徴として、独立したミサイル・システムとしてではなく、対空機関砲との複合システムとして装備されることが多い点が挙げられます。これは、ミサイルと機関砲のそれぞれの利点を組み合わせることで、より効果的な防空能力を発揮するためです。陸上型の自走式対空車両としては2K22 ツングースカが、艦載型の近接防御火器システムとしてはコールチク（輸出版はカシュタン）が開発されており、これらはいずれも30mm口径の機関砲と組み合わされています。

2K22ツングースカは、9M311ミサイルと30mm機関砲2門を搭載し、低空を侵攻する航空機やヘリコプター、巡航ミサイルなどに対して有効な防御を提供します。また、コールチク（カシュタン）は、艦艇に搭載され、対艦ミサイルや航空機からの攻撃に対する最終防御線として機能します。

21世紀初頭からは、9M311シリーズの後継となる9M335（57E6、NATOコードネーム：SA-22 グレイハウンド）ミサイルが実用化されました。このミサイルを搭載する自走式対空車両としてパーンツィリ-S1が開発され、より高度な防空能力を提供しています。パーンツィリ-S1は、9M335ミサイルと30mm機関砲2門を搭載し、探知・追尾レーダーも備えており、より広範囲な脅威に対応できます。

このように、9M311トレウゴリニクは、その後の発展型や複合システムを通じて、現代の防空システムにおいて重要な役割を果たしてきました。後継の9M335ミサイルやパーンツィリ-S1の登場により、その地位は徐々に取って代わられつつありますが、依然として多くの国で運用されていると考えられます。

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