A型貨物船

A型貨物船の概要

A型貨物船（Aがたかもつせん）は、1935年から1938年にかけて日本郵船によって運航された貨物船の一クラスであり、三菱長崎造船所で5隻が建造されました。このクラスの船は、日本郵船にとって初期のディーゼル貨物船の第二弾であり、主に欧州航路で活躍しました。

建造の背景

日本郵船は、1930年代初頭に主力としていたT型貨物船が古く、速力面での競争力を失っていることに悩んでいました。特に横浜から発信される生糸輸送においては、同時期に運航を開始した大阪商船や国際汽船のディーゼル船が市場の大部分を占めていました。この状況を打破するため、日本郵船は貨物船部門の改善に取り組むことにしました。最初のステップとして、まずはニューヨーク航路向けのN型貨物船を建造し、更には特にリヴァプール航路での競争に対応するために、A型貨物船の建造が計画されました。

このクラスの名称は、すべて「あ（A）」で始まる船名から取られています。司令部の方針に基づき、一般的にこの新しい船はより効率的なデザインと高性能機関を搭載することを目指して建造されました。

特徴と技術

A型貨物船の最大の特徴は、従来の単働式ディーゼル機関から発展した複働式ディーゼル機関の採用にあります。三菱長崎造船所は、スルザー社との提携により、複働式の「7DSD型」ディーゼル機関を開発し、効率的なエンジン性能を実現しました。その後、独自の「MS型」ディーゼル機関を改良した「MSD型」がA型貨物船に搭載され、その性能を最大限に引き出しました。しかし、整備が煩雑で技術革新により単働式が主流になるとともに、複働式はほとんど使われなくなりました。

また、特に最終に建造された「吾妻丸」は、他の姉妹船とは異なり、船首楼付の平甲板型の設計がされていた点が特徴でした。これにより、一部の性能や容量に違いが生じました。

就役と戦争での活躍

A型貨物船のうち「赤城丸」と「有馬丸」は、建造後すぐにリヴァプール線に就航しましたが、競争が激しい市場でのパフォーマンスは芳しくありませんでした。そのため、別の航路開発を試みたり、パナマ運河経由の新しいルートを開設したりしました。しかし、第二次世界大戦の開戦とともに、日本海軍に徴用され、全ての船が戦没しました。特に「赤城丸」と「粟田丸」は特設巡洋艦に、他の船も特設運送艦や応急タンカーに改造されました。

戦争終結後、A型貨物船はそのすべてが戦没し、結果的には残存する船はありませんでした。この経緯は、日本の海運史における重要な一幕であり、海上輸送における技術革新と戦争の影響を象徴する事例といえるでしょう。

まとめ

A型貨物船は、その建造と運用、そして戦争における一連の歴史を通じて、日本の航海史における重要な位置を占めていました。技術的な進歩を反映し、新しい航路開発の試みがあったものの、戦争による影響により、その存在意義は大きく失われてしまいました。

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