A-40 (航空機)

A-40 アリバトロース

A-40「アリバトロース」は、ソビエト連邦のベリエフ設計局が生み出した大型多目的水陸両用飛行艇です。その名はロシア語で「アホウドリ」を意味し、北大西洋条約機構（NATO）からは「マーメイド」（人魚）のコードネームが与えられました。

開発の背景と機体概要

第二次世界大戦後、多くの航空先進国で大型飛行艇の需要が減少する中、ソ連ではBe-12の後継となる、より高性能な飛行艇の開発が続けられました。A-40はこうした流れの中で誕生し、1986年に初めて空へ飛び立ちました。機体重量は約86トンにも達する大型機でありながら、主翼の後方上下に配置された4基のジェットエンジンにより、当時のジェット旅客機と同等の高速飛行が可能でした。主要エンジンにはD-30KVPが採用され、加えて離水時の補助として小型のRD-60Kエンジンが搭載されていました。

主な任務と搭載能力

A-40の主な任務は対潜哨戒でした。機首のレドームには、潜水艦などの目標を探知・追跡するための照準・捜索システム「ソヴァー」（ロシア語でフクロウの意）が搭載されています。機内には最大6,500 kgの兵装を搭載でき、対潜魚雷「オルラーン」（ワシの意）を3発、または対潜ミサイル「コールシュン」（トビの意）、「ヤーストレプ」（タカの意）、「オリョール」（ワシの意）を最大6発搭載できました。さらに、主翼下面には空対艦ミサイルKh-35を装備することも可能です。

派生型と将来構想

A-40をベースとして、様々な派生型や改良計画が存在します。捜索・救難機として計画されたA-42（またはBe-42）は1988年に開発契約が結ばれました。他にも、旅客機型のBe-40Pや貨客機型のA-40PTなどが構想されていました。

2000年には、水上機に関する展示会で、新型エンジンD-27の採用などにより性能向上を目指した対潜哨戒機派生型A-40Mの計画が発表されました。また、2018年以降開発が進められているとされるA-42の改良型では、技術特性の向上を図るため翼の形状変更、人間工学に基づく改善、消防機能を含む多機能化、荒海での救助能力強化などが盛り込まれています。エンジンはPD-14やD-27の搭載が検討されており、航続距離9,300 kmへの延伸オプションや空中給油システムの追加、改良されたレーダー、熱探知機、ナビゲーションシステムといった先進的なアビオニクス、新型の爆雷や魚雷、原子力潜水艦の探知・追跡能力などが計画されています。

計画の現状と再開への動き

A-40プロジェクトはソビエト連邦崩壊後の1993年に一度中断されました。しかし、その後もロシア軍への納入や生産再開に関する議論や発表が度々行われています。2010年には海軍幹部が水上機不足を理由にA-40の運用を提言。2012年にはメーカー側がA-42での入札参加意向を示すも、海軍が開発資金を停止したことが明らかになりました。しかし、メーカーは開発継続の意向を示唆しました。2014年には統一航空機製造会社の幹部がA-40の復活に言及し、2016年には黒海艦隊司令官が2020年までのBe-12代替としてA-40の名を挙げました。2018年の水上機展示会ではA-40の生産再開予定が正式に発表され、試作機の復元作業も進められていることが公表されました。2019年には国防省筋からA-42の生産再開が原則決定されたとの報道もあり、この大型飛行艇計画の行方は現在も注目されています。

主要スペック (A-40)

全幅: 42.50 m
全長: 45.70 m
全高: 11.07 m
翼面積: 200.00 m²
空虚重量: 44,000 kg
通常離水重量: 86,000 kg
最大離水重量: 90,000 kg
搭載燃料: 35,000 kg
エンジン: アヴィアドヴィガーテリ D-30TKPV ×2基、クリーモフ RD-60K ×2基
出力: D-30TKPV 117.68 kN ×2、RD-60K 24.52 kN ×2
最高速度: 800 km/h
巡航速度: 720 km/h
実用航続距離（最大）: 5,500 km
実用航続距離（最大積載時）: 4,000 km
哨戒可能時間: 12 時間
実用上昇限度: 13,000 m
乗員: 4 名
兵装搭載量: 最大 6,500 kg（機内および主翼下に搭載可能）

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