AB-2 (航空機)

AB-2 水上偵察機の概要

AB-2は、愛知時計電機航空機部（後の愛知航空機）が大日本帝国海軍の要求に基づいて試作した水上偵察機です。この機体は、1928年に海軍が愛知と中島飛行機に対して命じたカタパルトから発射可能な水上偵察機の競作計画の一環として開発されました。

開発の背景

愛知は、独自に開発を進める傍ら、ドイツのハインケル社から輸入したHD-56（後の九〇式一号水上偵察機）を使用していました。1929年には、技師の三木鉄夫を中心にして、愛知初の自社設計機を開発することが決定されました。これにより、愛知は水上偵察機市場での競争力を高めようとしました。

機体の特徴

AB-2の機体設計は、金属製の構造を持つ胴体と木製の翼を備えた複葉機で、降着装置は双フロートです。全長は8.24m、全幅11.00m、高さ3.446mで、主翼面積は36.0m²、重さは自重1,115kg、全備重量1,655kgとなっています。エンジンには愛知製のAC-1空冷星型9気筒エンジンを搭載しており、最大出力は330hp、最大速度は180km/hです。

性能と武装

AB-2は、巡航速度130km/hで、航続時間は約5.9時間に達しました。偵察任務に必要な武装として、7.7mmの固定機銃と旋回機銃、また30kg爆弾を2発搭載していました。これにより、期待された性能は一五式水上偵察機を上回るものでしたが、実際の運用においては問題が発生しました。

開発の中断

試作の段階で、愛知製のAC-1エンジンが思うように機能せず、予定されていた性能を発揮できませんでした。そのため、いくつかの改修が実施されましたが、最終的には集合排気管の不備による発火事故が発生し、試作機のうち1機が焼失する事態となりました。この事故の影響を受けて、さらなる開発が続けられることはなく、中止されることになりました。

結論

AB-2は、愛知航空機の自社設計による水上偵察機として期待されていたものの、エンジンの不具合と事故によってその道を閉ざされました。その試作は、航空機の設計と開発における課題を物語っています。今後の航空機開発における教訓として、この機体の試みは忘れられることはないでしょう。

参考文献として、野沢正の『日本航空機総集 愛知・空技廠篇』（出版協同社、1959年）があります。

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