ABCD問題

ABCD問題とは

ABCD問題とは、1982年に日本の新左翼党派である日本革命的共産主義者同盟（[[第四インターナショナル日本支部）]]内で発生した、複数の男性活動家による強姦事件とその後の組織的対応を指す一連の問題です。この事件は、組織内における女性差別という根深い問題を浮き彫りにし、その後の組織分裂や女性解放運動の高まりに大きな影響を与えました。

事件の概要

1982年8月、三里塚闘争の拠点となっていた「労農合宿所」で、第四インターの男性活動家が女性利用者を強姦しようとする事件が発生しました。被害者は直ちに組織に告発しましたが、当初、指導部はこれを個人的な不祥事として扱い、加害男性に自己批判書を書かせることで事態の収束を図ろうとしました。しかし、その自己批判書は組織に迷惑をかけたことへの謝罪に終始し、被害者への謝罪がなかったため、被害者から組織への決別を宣告される事態となりました。

その後、他の女性活動家からも同様の被害の訴えが相次ぎ、最終的に4人の男性活動家が強姦および強姦未遂の疑いで除名されることとなりました。この4人の男性活動家は、それぞれA、B、C、Dと呼ばれ、この事件は「ABCD問題」として知られるようになりました。

事件後の動き

1983年9月、第四インターは声明文を発表し、被害者および「すべての女性」に対して謝罪しました。しかし、同時に加害男性の運動への復帰を求める内容であったため、被害者や他の女性活動家からは反発を受けました。

多くの女性活動家は、この事件をきっかけに、ジェンダーの問題に対して組織が真剣に取り組むことを期待していました。第四インターは「女性の望まない性的行為はすべて強姦である」と規定しましたが、その後、中核派からの襲撃事件などが発生し、この問題は事実上棚上げとなりました。

同時期に、労働運動をめぐる路線対立も深刻化し、組織は分裂しました。女性差別問題よりも路線論争に熱中する男性活動家に対し、女性活動家は組織に見切りをつけ、次々と離脱しました。

1987年には、女性メンバーによる組織内団体「第四インター・女性解放グループ」が結成されましたが、この動きを巡って組織はさらに混乱しました。「女性解放グループ」を認めないグループが組織から離脱し、組織はさらに分裂が進みました。

1991年、第四インターナショナル統一書記局は、日本支部の現状を「第四インターナショナルの支部」としての資格を欠いていると判断し、日本支部の資格を剥奪しました。支部資格を剥奪された旧日本支部は、その後日本革命的共産主義者同盟（JRCL）と改名しました。

1996年、JRCLは改めて女性差別問題について「自己批判と総括」を発表しました。

2020年には、機関紙『かけはし』でJRCLとNCIWが連名で「第四インターナショナル日本支部としての活動再開にあたって」という共同コミュニケを発表し、団体の第四インターナショナル日本支部への復帰を表明しました。

ABCD問題関連文書

• - 三里塚現闘団員四名の除名とわれわれの自己批判 (日本革命的共産主義者同盟（[[第四インターナショナル日本支部）]]中央委員会) 1983年9月19日
• - わたしたちの再出発にあたって－何よりもまず女たちのものである革命をたぐりよせるために（第四インター・女性解放グループ) 1987年9月21日
• - 「第四インター・女性解放グループ」の発足について(日本革命的共産主義者同盟（[[第四インターナショナル日本支部）]]中央委員会)1987年9月
• - 組織内女性差別問題の総括（その1） 三中委決定と組織内女性差別問題（夏井萌）『労働者の旗』創刊準備2号 1988年6月10日
• - 組織内女性差別問題についての同盟の経過と問題点について(日本革命的共産主義者同盟（JRCL）)第17回全国大会文書 1997年1月1日
• - 「新左翼と女性差別」かねこさち論文を読む(遠山裕樹)『青年戦線』1999年10月25日・No.153

参考文献

• - かねこさち『新左翼組織と女性差別』（近藤和子編『性幻想を語る』三一書房、1998年に所収）

関連項目

• - セクシャルハラスメント
• - パワーハラスメント
• - 性差別（女性差別）

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