AECA 767-103便離陸失敗事故

AECA 767-103便離陸失敗事故

1984年9月18日にエクアドル、キトのマリスカル・スクレ国際空港で発生したAECA（Aeroservicios Ecuatorianos）767-103便の離陸失敗事故は、多くの犠牲者を出す痛ましい事故となりました。

事故概要

マイアミ発ホセ・ホアキン・デ・オルメード国際空港行きのAECA 767-103便（ダグラス DC-8-55F、機体記号HC-BKN）は、経由地であるマリスカル・スクレ国際空港からの離陸に失敗し、空港近隣の住宅地に墜落しました。この事故により、乗員4名全員と地上の49名、合わせて53名が死亡しました。一部報道では死者数が60名や75名と報告されています。

事故機について

事故機のダグラス DC-8-55Fは、1965年に製造された機体でした。事故までに60,070時間の飛行時間と17,003回のサイクルを経験していました。

事故の経緯

767-103便は、マイアミからマリスカル・スクレ国際空港を経由し、ホセ・ホアキン・デ・オルメード国際空港へ向かう国際貨物便でした。マリスカル・スクレ国際空港にはECT6時52分に着陸しました。

出発予定時刻の9時頃、エクアドルのパイロット組合（FEDTA）のメンバーが、ストライキに関する話し合いをパイロットと始めました。同社のパイロットたちは前日からストライキを宣言していましたが、事故機のパイロットはストライキに応じず、飛行を継続することを決定しました。

出発予定時刻から2時間半ほど遅れて第4エンジンが始動され、パイロットはトーイングトラクターで機体を滑走路まで牽引するよう指示しました。これは、離陸を少しでも早めるための措置だったと推測されています。残りの3基のエンジンは、滑走路へ牽引される最中に始動されました。

しかし、離陸前のチェックリストが適切に実施されなかったため、パイロットは昇降舵の設定が誤っていることに気づきませんでした。当時、昇降舵は0.5度の機首上げ位置に設定されていましたが、離陸には8度の機首上げ設定が必要でした。

767-103便は滑走路35から離陸滑走を開始しましたが、3,120mの滑走路内で浮揚できず、オーバーランしました。滑走路端から48m地点で機体は約80フィート上昇しましたが、昇降舵がILSアンテナに接触。その後、機体は滑走路から460m地点の住宅地に墜落し、25戸の建物が破壊されました。この事故により、乗員4名全員と地上の49名が死亡し、75名が負傷しました。

事故調査

事故発生の翌日、レオン・フェブレス・コルデロ大統領は事故現場を視察し、国民に3日間の追悼を捧げるよう指示するとともに、徹底的な事故調査を命じました。当初、当局はエンジン1基の故障が原因であると発表しました。

その後の調査で、パイロットが昇降舵の設定を誤ったことが主な原因であると推定されました。加えて、パイロットがストライキによる遅延で焦り、離陸準備に集中できなかったこと、機体重量や重心に関する適切な報告を受けないまま管制官が離陸許可を出したことも、事故の要因として指摘されました。事故後には、8つの安全勧告が出されました。

事故の背景

この事故の背景には、航空会社の労働争議と、それに伴うパイロットの心理的な焦りがあったと考えられます。ストライキによる遅延を取り戻そうとする意識が、結果的に安全確認の不徹底を招き、悲劇的な事故につながってしまったと言えるでしょう。

関連項目

* 中国通用航空7552便離陸失敗事故

もう一度検索