AEROS (人工衛星)

AEROSシリーズは、1970年代に実施されたドイツの宇宙開発プロジェクトの一環として打ち上げられた、地球大気圏上層部を研究するための科学衛星シリーズです。

概要と目的

本シリーズは、AEROS-A（AEROS-1とも呼ばれます）とAEROS-B（AEROS-2とも呼ばれます）の二機の衛星で構成されていました。これらの衛星の主要な目的は、地球大気圏の上層部、特に電離層、そして中でも太陽からの極紫外線放射が強く影響するF領域と呼ばれる領域の物理的・化学的特性を詳細に調査することでした。このプロジェクトによって、地球の上層大気と宇宙環境との相互作用に関する理解を深めることが目指されました。

国際協力と製造

このAEROSプロジェクトは、アメリカ航空宇宙局（NASA）と当時の西ドイツ連邦科学技術省（Bundesministerium für Foschung und Technologie、略称BMFT）との密接な国際協力のもとに進められました。両国の技術と知見が結集され、高度な観測が可能な衛星システムが構築されました。衛星本体の製造は、アメリカ合衆国の航空宇宙企業であるボール・エアロスペース社が担当しました。

技術的仕様

AEROS衛星は、以下の技術的な特徴を有していました。

打上げ:
使用ロケット：Scout
発射場：アメリカ合衆国カリフォルニア州、ヴァンデンバーグ空軍基地ウェスタン宇宙ミサイルセンター
打上げ日：
AEROS-A：1972年12月16日
AEROS-B：1974年7月16日

運用期間と再突入:
AEROS-Aの再突入日：1973年8月22日
AEROS-Bの再突入日：1975年9月2日

衛星の構造:
全重量：約127キログラム
形状：シリンダー型
直径：0.91メートル
全長：0.71メートル

電力と姿勢制御:
電源：太陽電池アレイとニッケル・カドミウムバッテリーの組み合わせ
要求電力：4.7ワットから34.3ワットの範囲
姿勢制御方式：スピン安定

軌道:
種類：極軌道に近い、準太陽同期軌道
軌道要素：
AEROS-A：近地点高度約223 km x 遠地点高度約867 km, 軌道傾斜角96.9°
* AEROS-B：近地点高度約217 km x 遠地点高度約879 km, 軌道傾斜角97.4°
これらの軌道は、地球の上層大気や電離層を集中的に観測するために選定されました。

科学的貢献

AEROSシリーズによって取得されたデータは、1970年代における地球大気圏上層部および電離層の研究において、非常に重要な役割を果たしました。特に、太陽活動が地球の電離層に与える複雑な影響について、詳細な観測情報を提供し、この分野の科学的理解の進展に大きく貢献しました。

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