AGM-62 (ミサイル)

AGM-62 ウォールアイ

AGM-62 ウォールアイ（英: Walleye）は、アメリカ合衆国によって開発されたテレビジョン誘導滑空爆弾です。1960年代からアメリカ海軍や空軍で運用されてきたこの兵器は、対地精密誘導兵器として初めて実戦に投入されました。ウォールアイは空対地ミサイルに分類されますが、実際には推進装置を持たない特殊な爆弾であり、情報によって厳密に操作されます。

開発の背景

ウォールアイが登場する以前、アメリカ軍で使用されていた空対地誘導兵器はAGM-12ブルパップでした。しかし、ブルパップには発射後も手動で目標に誘導する必要があるという大きな欠点がありました。このため、アメリカ海軍は、発射後にすぐに航空機が離脱できる能力を有する、いわゆるファイア・アンド・フォーゲット機能を備えた飛行兵器を求めていました。

この新しいテレビ誘導爆弾のアイデアは、カリフォルニア州チャイナレイクの海軍兵器試験センターに勤務していた技術者たちの話し合いから生まれました。ノーマン・ケイという技術者が自宅でテレビを作る趣味を持ち、その過程でアイコノスコープ・カメラを改造することで、目標追跡の閃きを得たのです。このグループはそのアイデアを基に、アメリカ海軍から資金を確保し、技術開発を進めることになります。そして、ウォールアイの開発は始まりました。

初試験と生産

1963年1月、YA-4Bスカイホークのパイロットが初めてウォールアイを投下しました。その結果は成功し、1966年には生産契約が結ばれ、翌年からアメリカ海軍・空軍の両方で運用されることが決定しました。ウォールアイの初期型であるウォールアイ Iは、約374kgの成形炸薬を搭載し、最大30kmの射程を持っていました。

特徴と機能

ウォールアイは、目標を正確に攻撃するために設計された精密誘導兵器です。その最大の特性は、発射後に航空機が即座に離脱できるファイア・アンド・フォーゲット機能です。パイロットは高高度から目標に向けて投弾し、爆弾の先端にあるテレビカメラがリアルタイムで映像を捉え、コックピットに送信します。この映像をもとにパイロットは照準を設定し、爆弾が自動で目標に向かって滑空します。この特性により、パイロットは敵防空網から迅速に離脱することが可能です。

戦績

ウォールアイは1967年のベトナム戦争で大きな成功を収めました。アメリカ海軍のパイロットたちは、ウォールアイを使ってハノイの発電所に直撃を記録しました。これにより、アメリカ軍は北ベトナムの主要な電力供給源を一時的に遮断することができました。しかし、建物の頑強な構造物に対しては期待するほどの破壊効果を発揮できず、後に2000ポンドのバージョンが開発されることになりました。

各型と進化

ウォールアイは、多くのバージョンが存在し、それぞれ異なる能力を持ちます。ウォールアイ I、ウォールアイ IIは初期型であり、次いでERDL型などが登場しました。ERDLはデータリンク機能を持ち、さらに遠距離からの精密攻撃が可能になりました。これにより、悪天候や暗闇の中でも目標に命中する可能性が高まりました。

エンジンを持たないウォールアイの技術的進歩は、現代の戦争での精密誘導爆弾の運用に大きな影響を与えました。ウォールアイはその後の多くの兵器開発に寄与し、アメリカ軍の精密攻撃能力を大きく向上させました。

ウォールアイは、単なる武器としての役割を超え、技術革新の象徴としても知られ、多くのゲームチェンジャーとなる兵器たちの土台を築く重要な存在となりました。

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