ANS

オランダ初の天文衛星ANS

ANS（Astronomical Netherlands Satellite）は、オランダが初めて打ち上げた人工衛星であり、紫外線およびX線観測を目的としていました。1974年8月30日にアメリカのヴァンデンバーグ空軍基地からスカウトロケットによって打ち上げられ、オランダ宇宙研究所とNASAの共同プロジェクトとして実施されました。この衛星は、オランダの宇宙開発における重要な一歩であり、後の宇宙探査活動の基盤となりました。

衛星の軌道と姿勢制御

ANSは、初期軌道において近地点266km、遠地点1176km、軌道傾斜角98.0°という太陽同期軌道に投入されました。軌道離心率は0.064048で、周期は99.2分でした。衛星の姿勢制御には、リアクションホイールと地球の磁場を利用したマグネティックコイルが用いられました。また、ミッション初期には2つの質量物体を放出し、衛星の角運動量を減少させる工夫も凝らされました。姿勢の測定には、太陽センサー、水平感知機、恒星センサー、磁気センサーなど、様々なセンサーが使用されました。

X線観測

ANSは、60平方センチメートルの検出器を用いて、2-30KeVのエネルギー領域のX線光子を測定しました。これにより、銀河系内外のX線源の位置を特定し、それらのスペクトルを測定することに成功しました。さらに、X線源の時間的変化を観測し、X線バーストの発見やカペラからのX線検出といった成果を上げました。これらの観測は、高エネルギー宇宙現象の解明に大きく貢献しました。

紫外線観測

ANSは、22平方センチメートル（実際には260平方センチメートル）のカセグレン望遠鏡を用いて紫外線も観測しました。観測波長は150から330nmで、約400の天体に対して18,000回以上の測定が行われました。この観測データは、恒星の進化や銀河の構造研究に貴重な情報を提供しました。ANSの紫外線観測は、初期の紫外線天文学において重要な役割を果たしました。

その他

ANSは、その成果を記念して、小惑星9996 ANSに名前が付けられました。この衛星は、オランダの宇宙開発の象徴であり、国際的な宇宙研究においても重要な貢献を果たしました。

参考文献

Bloemendal, W.; C. Kramer (1973). “The Netherlands astronomical satellite (ANS)”. Philips Tech. Rev. 33: 117.

関連項目

宇宙望遠鏡の一覧
紫外線天文学
X線天文学

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