AN/AWG-9

AN/AWG-9 レーダー

AN/AWG-9は、アメリカのヒューズ・エアクラフト社によって開発された先進的なレーダーシステムであり、後にレイセオン社に買収されました。これは、アメリカ合衆国海軍の戦闘機であるF-111Bに搭載する目的で設計されたもので、全天候型のマルチモードXバンドパルス・ドップラー・レーダーとしての機能を持っています。

開発背景と搭載機の変遷

F-111Bが不採用となったため、AN/AWG-9は別の戦闘機であるF-14に流用されました。このレーダーシステムは、コヒーレント型パルス・ドップラー方式とモノパルス方式を組み合わせており、特に目を引く性能は、ルックダウン能力とシュートダウン能力です。これにより、レーダーがRCS（レーダー反射断面積）が1 m²の航空機を約207 kmまで探知できるという、当時としては類を見ない優れた探知距離を持っています。比較のために挙げると、F-15に搭載されているAN/APG-63|AN_APG-63の最大探知距離は148 kmであり、AWG-9の圧倒的な性能が際立ちます。

多目標追尾能力と攻撃力

AWG-9は同時に24機の空中目標を追尾する能力を備えており、AIM-54フェニックスミサイルを使用することで、最大6機の目標を同時に攻撃することが可能です。このような長距離での多目標同時攻撃能力は、F-14が初めて実用化したものであり、戦闘機の戦術や運用に大きな影響を与えました。

技術的特色

AN/AWG-9においては、Intel 8080 8ビットマイクロプロセッサが利用されており、これによって8ビットプログラムによる操作が行われています。さらに、AWG-9は戦闘機間でのデータ通信を行うためのTADIL（戦闘機間データ・リンク）が組み込まれており、TADIL-C（リンク4C）に参加することができます。このデータ・リンクは、当時の空対空データ通信において最大の容量を誇っていました。

APG-71との関係

1980年代には、AN/APG-71というレーダーがF-14Dに搭載されました。APG-71は完全にデジタル式となっており、F-15EのAN/APG-70から得た技術のフィードバックを使い、一部の部品を共用することで小型軽量化が図られています。これにより、目標識別能力や電子妨害対抗能力が向上し、探知範囲は370 km（230マイル）にまで拡大しました。また、このレーダーシステムにはJTIDSも統合され、TADIL-Jに接続することが可能となりました。

対応機種

AN/AWG-9レーダーは、F-14A/B/Dに搭載されるほか、当初設計されていたF-111Bにも対応しています。このような技術の進化は、アメリカの航空戦力を支える重要な要素となっています。

参考文献

• - Sweetman, Bill, and Bonds, Ray. The Great Book of Modern Warplanes. Crown Publishers, 1987.

このレーダーシステムの開発と進化は、現代の航空戦の重要性を再確認させるものであり、技術がもたらす可能性の広がりを示しています。

もう一度検索