ARVNレンジャー

ARVNレンジャー：ベトナム戦争の精鋭部隊

ベトナム戦争において、南ベトナム軍（ARVN）の精鋭部隊として活躍したARVNレンジャー（別働軍、Biệt ộng Quân、BDQ）は、その卓越した戦闘能力と勇敢さで知られていました。アメリカ軍のグリーンベレーやレンジャー部隊からの支援を受け、越境作戦や敵の掃討といった重要な任務を担い、共和国軍の中でも特異な存在感を示しました。

歴史：フランスコマンドーから精鋭部隊へ

ARVNレンジャーの歴史は、1951年にフランスがニャチャンに設置したコマンドー部隊学校に遡ります。その後、アメリカ軍の軍事顧問がフランス軍の役割を引き継ぎ、学校はレンジャー学校へと改名。本格的なベトナム戦争の勃発に伴い、1960年にARVNレンジャーの創設が決定されました。

当初は既存の歩兵大隊から選抜された隊員を母体として、対反乱作戦を目的とした軽歩兵部隊として編成されました。しかし、徐々にその任務は多様化し、共和国軍の中でも高い自由度を認められた部隊へと発展していきます。アメリカ陸軍レンジャー学校への将校派遣や、米軍レンジャー部隊による個別指導も実施されました。

1962年には反乱鎮圧を目的とした特殊大隊の一部として編成されていましたが、1963年には独立した大隊に拡大され、反乱鎮圧に加え、各種軽歩兵作戦活動も担うようになります。1966年には軍団単位のレンジャー群(Ranger Group)が編成され、米軍の撤退が始まる1970年までこの体制が維持されました。

1970年以降は、ラオス・カンボジア国境に展開していたCIDG（民間不正規戦グループ）を編入し、国境警備任務の比重が大きくなりました。14,534人のCIDG隊員は37個戦闘大隊に再編成され、ARVNレンジャーの戦力は大幅に増強されました。サイゴン陥落が迫る1970年代初頭まで、ARVNレンジャーは落下傘部隊や海兵隊と共に、共和国軍の中でも特に人気のある部隊の一つでした。

しかし、1975年のベトナム戦争終結と共に、ARVNレンジャーは壊滅的な打撃を受けました。サイゴン陥落後も、多くの隊員が降伏を拒否して抗戦を続け、サイゴン政府の公式な降伏と武装解除命令が下される4月30日の朝まで戦い続けました。ベトナム共和国の消滅後、ARVNレンジャーの隊員は共産主義政府によって危険視され、多くが再教育キャンプでの長期服役を強いられました。

組織：軍団規模から小規模部隊まで

ARVNレンジャーは、軍団規模のレンジャー群から小規模の連絡小隊まで、様々な規模の部隊で構成されていました。

軍団付レンジャー連絡員: 各軍団には、レンジャー隊員の投入に関する必要性を議論する役割を担うレンジャー連絡小隊が設置されていました。

レンジャー群: 1975年時点で18個のレンジャー群が存在し、54個の大隊規模を誇りました。しかし、実際には22個大隊のみがレンジャー隊員で編成されており、残りはCIDGやマイク・フォースを再編した国境レンジャーでした。

国境レンジャー: 1973年には33個のレンジャー国境警備大隊が編成され、元CIDG隊員14,365名が所属しました。国境警備大隊は正規のレンジャー大隊よりやや小規模でした。

第81レンジャー群: プロジェクト・デルタの元で編成された特殊部隊で、空挺要員で構成され、特殊任務を担いました。

装備と訓練：米軍装備と厳しい訓練

ARVNレンジャーは、共和国陸軍の標準的な制服に加え、米軍のOG-107野戦服や迷彩服を着用していました。ヘルメットには大きな黄色の星と黒豹が描かれ、ベレー帽はマルーンまたは茶色で、フランス式に着用していました。

訓練は、ダナン、ニャチャン、ソンマオなどに設置された訓練施設で行われ、ジャングル戦や山岳戦など、実戦を想定した厳しいものでした。レンジャー訓練センターは「製鋼所」と呼ばれ、その厳しい訓練内容が示されています。訓練課程を修了した隊員には、剣を交差させた意匠のレンジャー記章が授与されました。

ARVNレンジャーは、ベトナム戦争における南ベトナム軍の象徴的な存在であり、その歴史と活躍は、戦争の激しさ、そして兵士たちの勇気と犠牲を物語っています。彼らの功績は、決して忘れられるべきではありません。

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