Android標準ブラウザ

Android標準ブラウザ (AOSP Browser) について

Android標準ブラウザ、またはAOSP Browser（Android Open Source Project Browser）は、Googleが開発したオープンソースのウェブブラウザです。このブラウザは、レンダリングエンジンとしてWebKitまたはBlinkを使用しており、長らくAndroidデバイスにプリインストールされてきました。

概要

Google Chrome for Androidがリリースされる以前は、Android標準ブラウザがデフォルトのブラウザとして搭載されていました。Google Chromeの登場後も、Android標準ブラウザは完全に姿を消したわけではなく、現在でも一部の端末やカスタムROMで利用されています。アプリのパッケージ名は `com.android.browser` であり、Playストア非認定のデバイスやLineageOSなどのカスタムROM環境でよく見られます。

Android 4.4以前のバージョンでは、OSの一部として提供され、端末ベンダーが提供するパッチによって更新されていました。しかし、Android 5.0以降は「AndroidシステムのWebView」として独立し、Google Playストア経由で更新されるようになりました。

Google Chromeとは異なり、Android標準ブラウザは端末ベンダーによるカスタマイズが可能です。そのため、バージョンごとの差異が大きいという特徴があります。

ライセンス

Android標準ブラウザのソースコードは、Android OSと同様にオープンソースライセンスで提供されており、自由に改変できます。ライセンスは主にApache License 2.0に準拠しているため、改変部分や追加部分をGPLのようなライセンスで公開する必要はありません。ただし、WebKitのライセンスはLGPL、Linuxカーネル関連部分はGPLであるため、これらを利用する場合は公開が求められます。

Google ChromeなどのGoogle製アプリケーションはプロプライエタリなライセンスで提供されており、Google Mobile Service認証を受けた端末でのみ利用可能です。そのため、認証を受けていないデバイスでは、Google Chromeの代わりにAndroid標準ブラウザが搭載されることがあります。

AndroidシステムのWebView

Androidアプリには、ブラウザを起動せずにアプリ内でWebページを表示する機能があります。これは「WebView」と呼ばれるコンポーネントによって実現されています。

Android 4.4以前では、WebViewはOSの一部として組み込まれており、システムアップデートを通じて修正や機能追加が行われていました。しかし、システムアップデートはファイルサイズが大きく、端末の再起動も必要となるため、HTML5のような新しいWeb技術の実装が遅れるという問題がありました。

Android 5.0以降では、この問題を解決するためにWebViewを「AndroidシステムのWebView」として独立させ、Google Playストア経由で更新できるようになりました。これにより、セキュリティ修正を迅速に行うことが可能になりました。なお、このWebViewはGoogle Chromeとは異なります。

Android 7以降では、WebViewの機能がGoogle Chromeに統合されたため、ChromeがインストールされていればAndroid System WebViewは不要となりました。しかし、Android 10では再びChromeとAndroid System WebViewが分離され、WebViewのアップデート処理も別に行われるようになりました。

経緯

Android標準ブラウザの開発は、2003年にAndroid Inc.によって開始されました。Android Inc.は、2005年にGoogleに買収されています。

AOSP Browser 1

バージョン1.5では、Webページのコピーアンドペースト機能が追加されました。

AOSP Browser 2

2009年 10月26日にAndroid 2.x向けに公開され、新しいユーザーインターフェースとHTML5のサポートが強化されました。バージョン2.2からはAdobe Flashに対応しました。

AOSP Browser 3

2011年2月22日にAndroid 3.x向けに公開されました。Android 3はタブレット向けに設計されたOSであるため、AOSP Browserもタブレット向けのUIとなっています。また、HTML Media Captureに対応しました。

AOSP Browser 4

2011年10月18日にAndroid 4.x向けに公開されました。Android 4.xでは、スマートフォンとタブレットのUIが統合されたため、ブラウザもスマートフォン向けのUIに戻りました。このバージョンでは、HTML5ビデオの改善、スクロールやズームの速度向上、HTML5/CSS3/Canvasアニメーションの速度向上、テキスト入力の改善、JavaScript (V8) の速度向上、HTML5 Media Capture対応、Adobe Flashの廃止などが実施されました。また、Googleアカウント経由でブックマークを同期したり、サイトをオフライン保存したりする機能が追加されました。

AOSP Browser 4.4

2013年 10月31日に公開され、WebViewがWebKitからChromiumベースに置き換えられました。ただし、WebGL, WebRTC, WebAudio, Fullscreen API, Form validationなどは非対応のままでした。また、このバージョン以降で一部の機能が削除されました。

AOSP Browser 5

2014年 6月26日に公開され、このバージョン以降はWebViewがAndroidシステムのWebViewによって更新されるようになりました。

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