Annals of Mathematics

Annals of Mathematics（アナルズ・オブ・マセマティクス）は、アメリカ合衆国のプリンストン大学およびプリンストン高等研究所によって隔月で発行されている、数学分野の科学学術雑誌です。この雑誌は、インパクトファクターをはじめとする様々な評価基準において、世界の数学誌の中で最高峰の一つとして広く認められています。一般的には「Ann. Math.」あるいは「Ann. of Math.」と略記されます。

その歴史は、1874年にジョエル・ヘンドリクスが創刊・編集した『ジ・アナリスト』（The Analyst）誌に遡ります。同誌は、応用数学および純粋数学におけるあらゆる興味深く重要な問題、特に理論や実用天文学、機械論哲学、工学における新たな発見を報告・分析するための媒体を提供することを目指していました。アイオワ州デモインで発行され、アメリカ国内で初めて1年以上継続して刊行された数学専門誌の一つとして知られています。10年間刊行が続きましたが、1883年にヘンドリクスの健康状態の悪化により、その発行形態は終了を迎えました。しかし、ヘンドリクスは新たな運営体制への移行を準備し、その結果、1884年3月より『Annals of Mathematics』として生まれ変わり、刊行が継続されることとなりました。

新たな装いとなった同誌は、当初バージニア大学のオーモンド・ストーンが編集を担いました。発行拠点は、1899年にハーバード大学へ移った後、1911年に現在の本拠地であるプリンストン大学へとたどり着きました。

特に重要な時代として、ソロモン・レフシェッツが編集を務めた1928年から1958年までの期間が挙げられます。この30年間で、同誌は国際的にますます権威ある学術誌としての地位を確立しました。当時の著名な数学者であったノーマン・スティーンロッドは、レフシェッツが編集者として果たした影響について、次のように評しています。「一流学術誌がアメリカ人数学者に対して重要である点は、彼らに目指すべき高い水準を定めることだ。この幾分か直接的でないやり方で、レフシェッツは合衆国の数学の発展に深く寄与した。」

プリンストン大学は1933年まで単独で発行を続けていましたが、同年からはプリンストン高等研究所も共同で編集・発行に加わることとなり、現在に至る共同体制が始まりました。

近代における大きな変化として、1998年以降は、従来の印刷版に加え、電子版の提供も開始されました。当初、電子版は無料で利用できるオープンアクセス形式であった時期もありましたが、2008年からはアクセスが有料化されました。また、2003年より前のバックナンバーは有料データベースJSTORに収められており、原則として論文の公開から5年が経過しないと無料でアクセスできない仕組みとなっています。

現在の編集体制では、プリンストン高等研究所のヘルムート・ホーファー氏をはじめ、プリンストン大学所属のニック・カッツ氏、Sergiu Klainerman氏、フェルナンド・コーダ・マルケス氏、アサフ・ノール氏、ピーター・サルナック氏、ゾルターン・サボー氏らが編集者を務めています。

同誌の影響度を示す具体的な例として、Journal Citation Reportsによれば、2009年度のインパクトファクターは4.174であり、当時評価対象となった数学領域の255誌の学術誌の中で最高位に位置づけられていました。これは、同誌がいかに数学研究の最前線に位置し、世界中の研究者に参照されているかを示しています。

Annals of Mathematicsは、その長い歴史と厳しい査読基準によって、世界中の数学者にとって最も重要な論文発表の場の一つであり続けています。

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