Apple II

Apple II（アップル・ツー）は、1977年にApple社によって発表されたパーソナルコンピュータです。先行するApple Iが比較的技術志向のユーザー向けのキット要素を含む製品だったのに対し、Apple IIはより広い層、特に専門家ではない一般の愛好家などがすぐに使える完成品として開発されました。開発の中心人物はスティーブ・ウォズニアックで、彼はハードウェアとソフトウェアの多くの部分をほぼ一人で設計しました。Apple IIは、当時の他のマイクロコンピュータとの差別化を図るため、「ホームコンピュータ」としての側面を強調して市場に投入されました。

革新的な設計と機能

Apple IIの最大の特長の一つは、キーボード、CPU、メモリ、画面表示機能、音声出力、外部記憶装置インターフェース、さらにはプログラミング言語（BASIC）までを単一のパッケージに統合した、当時としては画期的な「オールインワン」設計でした。これにより、ユーザーは複雑な組み立てや追加機器の準備なしに、購入してすぐにコンピュータを利用開始できました。

また、カラー表示機能が標準で搭載されていた点も特筆されます。家庭用テレビに接続するだけでカラーグラフィックを表示できるNTSCビデオ出力は、それまでの文字（キャラクタ）入力が主流だった個人向けコンピュータとは一線を画しました。Apple IIは、テキストモード（40文字×24行）、低解像度グラフィック（40×48ドット、15色）、高解像度グラフィック（280×192ドット、6色）といった表示モードを備えていました。特に高解像度グラフィックは、後の多くのゲームやアプリケーションで活用される基盤となりました。ビデオメモリのアドレス配置には独特な工夫があり、これは当時のハードウェア制約の中で効率的な描画を実現するためのものでした。

ゲーム分野との親和性も高く、標準でゲームコントローラー接続用のI/O端子を備えていました。これにより、ゲームパドルやジョイスティックを簡単に接続でき、多くのゲームソフトウェアがApple II向けに開発される大きな要因となりました。

成功を支えた要因

Apple IIの大成功にはいくつかの要因が挙げられます。まず、1978年に非常に早い段階で安価に提供が開始されたフロッピーディスクドライブ「ディスクII」の存在です。これにより、プログラムやデータの保存・管理が飛躍的に容易になりました。次に、1979年に登場した世界初の表計算ソフトとされる「VisiCalc」です。ディスクメディアで提供されたこのキラーアプリケーションは、ビジネスユーザーを中心にApple IIの需要を大きく拡大させました。

また、本体後部に設けられた8個の拡張スロットによる高い拡張性も重要な要素でした。フロッピーディスクコントローラやプリンタカードなど、様々な機能を追加でき、各スロットに割り当てられたI/O空間とプログラム領域によって、カードを挿すだけで追加機能が利用可能になる設計でした。さらに、Apple IIの回路図が公開されていたため、ユーザーやサードパーティが独自の拡張カードを開発・販売することが活発に行われました。中には本体のCPUをバイパスし、より高性能な他社製CPUを搭載したカードなども登場し、コンピュータ愛好家たちの興味を引きつけました。

こうした要因が複合的に作用し、Apple IIはコンピュータ愛好家だけでなく、ホームユーザーや教育現場など幅広い層に受け入れられました。販売台数は年々倍増し、1993年まで生産が続けられ、累計約500万台が出荷されました。この成功が、後のApple社の発展における強固な礎を築きました。

バリエーションと後継機種

Apple IIは、その後の長い製品サイクルの中で様々な派生モデルや後継機種を生み出しました。初期の「Apple II」に続き、内蔵BASICが自動起動するようになった「Apple II plus」、日本市場向けのカナ表示対応版「Apple II J-plus」などが登場しました。その後、拡張された「Apple IIe」では、80桁表示や小文字入力、Appleキーなどが標準化され、さらに小型・一体化された「Apple IIc」、高性能16ビット CPUを搭載した「Apple IIGS」など、ハードウェアの進化や市場のニーズに応じた改良が加えられていきました。これらの後継機種は、Appleがビジネス向けコンピュータであるApple IIIに注力しつつも、Apple IIシリーズが持つ根強い人気に支えられて長く販売されました（なお、Apple IIIは商業的には成功しませんでした）。

Apple IIは、その革新的な設計、高い拡張性、そして豊富なソフトウェア資産によって、パーソナルコンピュータというジャンルが広く普及するための決定的な役割を果たしました。

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