AtheOS

AtheOSは、x86アーキテクチャを基盤とするPCで動作する自由ソフトウェアのオペレーティングシステム（OS）です。当初はAmigaOSのクローンを目指して開発が進められていましたが、後にその方針は転換されました。開発は中断されており、その成果はいくつかのプロジェクトへと分岐（フォーク）しています。現在では、AtheOSのソースコードから派生したSyllableが、その直接的な後継OSと位置づけられています。

公開当初から実用的な完成度を備えており、公式サイトもAtheOS上で運用されていました。SMP（対称型マルチプロセッシング）への対応や、マイクロカーネルを意識したスレッドの多用など、その設計は先進的でしたが、ソースコードには洗練されていない部分も残されていました。

"AtheOS"という名前は、ギリシャ神話の女神アテナに由来しますが、スペルは無神論者を意味する言葉と同じです。発音は「アテオス」となります。日本語フォントがあれば表示は可能ですが、日本語入力システム（IME）の実装は行われておらず、日本国内での情報や利用者は少ない状況です。API（アプリケーションプログラミングインターフェース）にはBeOSの影響が見られます。

歴史

AtheOSは、1994年から2000年初頭にかけて、ノルウェーのコンピュータプログラマであるクルト・スカウエン氏によって開発されました。2000年3月にUsenetを通じて世界に公開されました。ライセンスは自由ソフトウェアでしたが、スカウエン氏はOSの完成度を高めるために他の開発者の貢献を受け入れることに消極的で、開発は停滞し、結果としていくつかのプロジェクトへとフォークすることになりました。

2002年3月には、AtheOSのAPIを実装し、カーネルにLinuxを、ウィンドウシステムにXFree86を採用したcosmoeというプロジェクトが立ち上がりました。また、2002年7月には、開発の停滞を打開するため、AtheOSのソースツリーを基に別プロジェクトとして開発を継続するSyllableが発足しました。

2007年時点で公式サイトは閉鎖され、Syllableのサイトにミラーが残るのみとなっていますが、SyllableのサイトではAtheOSに関する言及は特にありません。AtheOSとしての開発は中断されたままであり、事実上開発は停止したと言えます。

スカウエン氏は、AtheOS上で動作するウェブブラウザABrowseを作成するために、KHTMLの移植も行っていました。

特徴

AtheOSには、以下のような特徴があります。

独自の64ビットジャーナリングファイルシステム (AFS)：ネイティブなAtheOS File System（AFS）を実装しています。
SMPのサポート：対称型マルチプロセッシングに対応しています。
オリジナルのオブジェクト指向GUIアーキテクチャ：レガシーにとらわれない独自のGUIアーキテクチャを採用しています。
POSIX規格の大部分をサポート：POSIX規格に準拠したAPIを提供しています。
マルチスレッドによるプリエンプティブ・マルチタスク：マルチスレッドを活用したプリエンプティブマルチタスクを実現しています。
オブジェクト指向の言語C++で記述されたAPI：APIはC++で記述されています。

これらの特徴から、AtheOSは当時としては先進的な技術を多く取り入れていたOSであったことが伺えます。しかし、開発者の意向や開発体制の問題から、そのポテンシャルを十分に発揮することができなかったと言えるでしょう。

もう一度検索