B57 (核爆弾)

B57核爆弾

B57核爆弾は、アメリカ合衆国が冷戦期に開発・運用した主要な核兵器の一つです。1963年に実戦配備が開始され、その後約30年間にわたりアメリカ軍の戦力として用いられ、1993年に退役しました。

開発経緯と設計思想

この核爆弾は、特に高速で飛行する航空機からの安全な投下を目的として開発されました。超音速飛行のような厳しい条件下での運用に耐えうるよう、その構造と外形は特別に設計されています。これにより、搭載機が目標上空を高速で通過しながらも、爆弾を確実に分離・投下することが可能でした。

基本となる B57 の物理的な仕様は、全長が約3メートル、胴体の直径が37.5センチメートル、そして基本重量が227キログラムでした。比較的小型軽量ながらも、強力な核出力を有していました。

派生型と多様な機能

B57 は、様々な作戦要求に応じるためにいくつかのオプションや派生型が製造されました。その中には、低高度からの投下時に機体への被害を避けるための「レイダウン投下」に対応したタイプが存在します。このタイプは、投下後に展開する直径3.8メートルの大型減速パラシュートを内蔵しており、爆弾の落下速度を遅らせることで、投下機が安全圏に離脱する時間を確保できました。

また、水上艦艇や潜水艦への攻撃を想定した「核爆雷」タイプも開発されました。この派生型は、水中で作動する水圧信管を備えており、対潜作戦において重要な役割を果たすことが期待されました。

核出力のバリエーション

B57 は、任務や目標に応じて核出力を選択できる点が特徴の一つでした。サブタイプ、すなわち「Mod」（モディフィケーション）によって異なる核出力が設定されていました。

Mod0: 5キロトン (kt)
Mod1 および Mod2: 10キロトン (kt)
Mod3 および Mod4: 15キロトン (kt)
Mod5: 20キロトン (kt)

特にアメリカ海軍向けの核爆雷タイプは、10キロトンの出力を持つものとして運用されました。

技術的背景

B57 の主要な核分裂/核融合反応を引き起こす「プライマリー」装置には、「Tsetse」コアが使用されていました。このコアは、当時アメリカが運用していた他の核兵器、例えば B43 核爆弾や W44 核弾頭などとも共通の設計が用いられており、部品の共通化や生産効率の向上に貢献したと考えられます。

生産と名称の変遷

B57 は当初、「Mark 57」という名称で生産が開始されました。1963年から1967年にかけて製造が行われています。その後、1968年に現行の「B57」という名称に改称されました。この名称変更は、アメリカ軍の兵器命名規則の変更に伴うものでした。

搭載航空機

B57 は、その汎用性の高さから、アメリカ軍の多様な航空機に搭載されました。アメリカ空軍においては、主にF-4ファントムIIのような戦闘爆撃機に搭載され、戦術的な核攻撃任務に投入されることが想定されていました。

一方、アメリカ海軍においては、対潜哨戒機に搭載された点が特徴的です。具体的には、S-3ヴァイキングや P-3オライオンといった機体から運用され、洋上における対潜水艦核攻撃能力を提供しました。

運用終了

B57核爆弾は、冷戦の終結や新たな核兵器の開発に伴い、徐々に退役が進められました。1993年には全ての B57 がアメリカ軍の運用から外され、その歴史に幕を下ろしました。

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