BACnet

BACnet：スマートビルディングを統合する通信プロトコル

BACnet（Building Automation and Control Networks）は、インテリジェントビルディングにおける様々な設備機器を統合的に制御するための、業界標準の通信プロトコルです。ASHRAE、ANSI、ISOといった国際機関によって標準規格として承認されており、世界中で広く採用されています。

BACnetの歴史

BACnetの開発は1987年に始まりました。テネシー州ナッシュビルで開催されたStandard Project Committee (SPC) の会合において、相互運用性、効率性、拡張性、費用対効果などを重視したプロトコルの開発が決定されました。その後、複数のワーキンググループが設立され、データ型、基本データ形式、アプリケーションサービスといった分野ごとに標準化作業が進められました。

1995年にはASHRAE/ANSI Standard 135として、2003年にはISO 16484-5として正式に標準化されました。その後もASHRAE Standing Standard Project Committee 135によって継続的に保守・改訂が重ねられており、現在も進化を続けています。

初期の段階では、シーメンスやAlertonといった企業がBACnet対応機器を開発し、市場に投入しました。その後、Johnson Controls、Teletrol Systems、TACなど多くの企業がBACnet製品を発売し、空調設備業界を中心に急速に普及していきました。

BACnet委員会の委員長は、初期はH. Michael Newmanが務め、その後Steven Bushby、William Swanと引き継がれ、標準規格の改訂や機能拡張を推進しました。2006年には、BACnet Manufacturers AssociationとBACnet Interest Group of North Americaが合併し、BACnet Internationalが設立され、国際的な普及促進活動が積極的に展開されています。

日本におけるBACnet

日本では、電気設備学会（IEIEJ）が独自の拡張を加えた「BAS標準インタフェース」（IEIEJ-P-0003:2000）を発行しましたが、完全な相互運用性には課題がありました。その後、ASHRAE/ANSI Standard 135-2004をベースとした「BACnetシステムインターオペラビリティガイドライン」（IEIEJ-G-0006:2006）を発行するなど、標準化への取り組みを継続しています。

BACnetプロトコルの概要

BACnetプロトコルは、設備機器間の通信に必要な様々なサービスを定義しています。機器の検出、データの送受信、イベント通知など、多様な機能を提供します。Who-Is、I-Am、Read-Property、Write-Propertyといったサービスが代表的です。

また、Analog Input、Analog Output、Binary Inputといった、様々なオブジェクトタイプを定義しており、これらのオブジェクトを通じて、空調、照明、セキュリティシステムなどの様々な設備を制御できます。

データリンク層と物理層については、イーサネット、RS-485、LonTalkなど、複数の選択肢が用意されており、システムの要件に合わせて最適な方法を選択できます。BACnet/IPでは、UDPポート番号47808（16進数でBAC0）を使用します。

BACnetテストと相互運用性

BACnet Internationalは、BACnetテストラボ（BTL）を設立し、BACnet機器の相互運用性テストや認証サービスを提供しています。BTLは、メーカーがBACnet規格に準拠した製品を開発・販売できるよう支援しています。SoftDEL SystemsなどもBACnetテストラボを運営しており、世界規模で相互運用性の確保に貢献しています。

まとめ

BACnetは、スマートビルディングにおける設備統合制御に不可欠な通信プロトコルです。そのオープン性、相互運用性、拡張性から、世界中で広く利用されており、今後もますます重要な役割を果たしていくものと期待されます。 様々な組織や企業による継続的な開発と標準化の取り組みによって、BACnetは将来にわたってスマートビルディング技術の中核として機能し続けるでしょう。

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