BETACAM-SX

Betacam SX（ベータカムSX）とは

Betacam SXは、1996年にソニーが開発した、主に放送や映像制作現場で使用されるSDTV（標準画質テレビ）向けのデジタルVTR規格です。名称は「ベーカムSX」と略されることもあります。

技術仕様

Betacam SXは、デジタルコンポーネント映像信号（YPbPr 4:2:2）をMPEG-2でフレーム内圧縮して記録します。これにより、従来のBetacamと比較して、より長時間の録画が可能になりました。使用するビデオカセットはBetacamと同じサイズですが、黄色のシェルで識別できるようになっています。Betacam SPのテープも利用できますが、記録特性は保証されていません。MPEG圧縮のため、画質はBetacam SPに若干劣るものの、最大180分の長時間録画が可能です。

一部の機種では、SCSI接続のハードディスクドライブが内蔵されており、テープレスでの記録・再生や、機材単独での編集が可能でした。この機能は、特に報道現場での迅速な編集に役立ちました。

普及と課題

Betacam SXは、一部のキー局やソニーから資本参加を受けている放送局の一部部門（報道素材を扱う部門など）で導入されました。しかし、全国的には普及が進んだとは言えません。

現在でも、報道のENG（Electronic News Gathering）やCS放送の番組送出などで使用されています。また、BetacamやBetacam SPフォーマットのテープ再生機材の代用や、番組内素材の再生機材としても活用されています。

しかし、導入後のサポート体制が十分でなかったり、一部のリモコン機器との相性が悪く、番組素材を手動で挿入するとMPEGシーケンスが乱れ、再生開始時にブロックノイズが発生するなどの問題がありました。これらの問題は後に解決されましたが、本来の利点を十分に活用できないまま、アーカイブ用途に転用されるケースが増えています。

2000年には、Betacam SXを改良したMPEG IMXというフォーマットも発売されています。

ノンリニア編集との親和性

Betacam SXは、ノンリニア編集システムが普及する以前に開発・発売されたため、ノンリニアシステムとの親和性が低いという課題がありました。また、画質面では一見綺麗に見えますが、複雑な映像になるとMPEG特有のノイズが発生するなど、Betacam SPと比較して欠点が目立つ仕様でした。さらに、新規導入にはシステム全体の更新が必要となること、規格としてSDのみであり価格も比較的高価であることなどから、2006年時点では新規導入はほとんどありませんでした。

しかし、Betacam SXの開発経験は、後のHDCAMフォーマット開発に活かされたことは間違いありません。

競合フォーマット

Betacam SXは、主にテレビ局や制作プロダクションの報道部門をターゲットとしていました。そのため、画質やコスト面でDVCPROと競合しました。画質については主観的な要素が大きく、一概には言えませんが、DVCPROの方が一般的に支持を得ていました。

関連規格

Betacam SXに関連する規格として、以下のようなものがあります。

Betacam
Digital BETACAM
MPEG IMX
DVCAM
HDCAM
Digital Tape Format - Betacam SXをベースにした補助記憶装置規格。

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