BIG TIME CHANGES

聖飢魔IIの転換期を象徴する傑作『BIG TIME CHANGES』

1987年11月21日、日本のヘヴィメタルバンド聖飢魔IIによって4枚目のオリジナルアルバム『BIG TIME CHANGES』がリリースされました。前作から1年ぶり、そしてバンドにとって大きな転換期を告げる作品として、聖飢魔IIの歴史において重要な位置を占めています。

ギタリスト交代とバンドの危機

前作のレコーディング後、ギタリストのジェイル大橋が脱退。音楽性に対する強いこだわりから、他のメンバーとの間に摩擦が生じていたことが脱退の背景にあります。大橋の脱退は、聖飢魔IIにとって大きな痛手でした。彼はそれまでの楽曲制作の中心人物でもあったからです。

大橋脱退後、聖飢魔IIは新たなギタリストとしてSGT.ルーク篁III世を迎え入れました。篁は以前、大橋とオーディションで競い合った経験があり、彼の加入によってバンドは再編、その後1999年の解散まで、このメンバー構成で活動を続けることになります。

全員作曲参加による新たな音楽性

大橋の脱退によって、楽曲制作の中心人物を失った聖飢魔II。本作では、この危機を乗り越えるべく、メンバー全員が作曲に参加するという、前例のない試みが行われました。これにより、聖飢魔IIの音楽性は多様性を増し、アメリカンロックの影響が色濃く反映された楽曲や、ファンクの要素を取り入れた楽曲など、実験的な試みが数多く見られます。

レコーディングは、メンバー全員が合宿を行い、楽曲制作にあたりました。当初は戸惑いもあったようですが、結果として、メンバー個々の個性と才能が融合した、魅力的な楽曲群が誕生しました。エース清水は、特に新ギタリスト篁が持ち込んだアメリカンロックのテイストを絶賛しており、それがバンドにとって大きな転換点になったと語っています。

重要な小教典『EL・DO・RA・DO』

本作のリリースと同日に、小教典「1999 SECRET OBJECT」が発表されました。しかし、実は本作の音楽性やバンドの状況を語る上で、更に重要な役割を果たした小教典が存在します。それは、前作に収録され、本作でも重要な位置を占める「EL・DO・RA・DO」です。この楽曲の作曲者である篁の加入は、大橋脱退による危機を乗り越える上で大きな役割を果たしました。さらに、同楽曲のB面曲として収録された「BURNING BLOOD」も、バンドの再構築に貢献した重要な楽曲でした。

『BIG TIME CHANGES』の音楽性

本作は、ハードロック色の強い楽曲からバラードまで、幅広い音楽性を展開しています。特に、篁が作曲した「ROCK'N'ROLL PRISONER」「1999 SECRET OBJECT」「NEVER ENDING DARKNESS」などは、彼のハードロックへの強いこだわりが感じられます。一方で、従来の聖飢魔IIのイメージとは異なる、より洗練されたサウンドも聴くことができます。

リズム・セクションも、それまでのスタイルから変化が見られます。特に、ゼノン石川の加入により、リズムセクションはより柔軟で奥行きのあるものになりました。

チャート成績と評価

『BIG TIME CHANGES』は、オリコンアルバムチャートで最高位9位を記録しました。これは、聖飢魔IIにとって大きな成功でした。音楽情報サイト『CDジャーナル』や『TOWER RECORDS ONLINE』では、本作の高い音楽性を評価するレビューが掲載されました。また、2013年にはBlu-spec CD2仕様で再リリースされ、改めてその価値が再確認されました。

プロモーションとバンドの方向性

本作のリリースを機に、聖飢魔IIは新たなプロモーション戦略を開始します。デーモン小暮のニッポン放送『オールナイトニッポン』へのレギュラー出演や、メンバーそれぞれの個性を前面に出したメディア展開などを通して、バンドの知名度向上と、それまでの「お笑いバンド」というイメージからの脱却を目指しました。

『BIG TIME CHANGES』は、聖飢魔IIにとって、バンドの危機を乗り越え、新たな音楽性と方向性を確立した、重要な作品となりました。メンバー全員の創造性と努力が結実した本作は、聖飢魔IIのキャリアにおける大きな転換期を象徴する、名盤と言えるでしょう。

もう一度検索