BMW・R75

BMW・R75：第二次世界大戦を駆け抜けた軍用サイドカー

BMW・R75は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツ軍が使用したサイドカー付きオートバイです。その卓越した不整地走破性能から、「超重ドイツ国防軍サイドカー」とも呼ばれ、過酷な戦場で活躍しました。

特徴

R75の最大の特徴は、サイドカー側の車輪も駆動する「パートタイム二輪駆動」構造です。これにより、当時のサイドカー付きオートバイとしては非常に高い不整地走破性能を実現しました。また、サイドカーには機関銃（MG34またはMG42）を装備することができ、戦闘能力も備えていました。

歴史

1930年代後半、ドイツ国防軍の要請により、ツンダップとともにサイドカー装備のオートバイの開発が始まりました。R75の試作モデルは、R71エンジンをベースにした750ccサイドバルブエンジンを搭載していましたが、オーバーヒートの問題が発生したため、R75専用のOHVエンジンが新たに設計されました。このエンジンは、後のBMWフラットツインエンジンの基礎となりました。

R75は、ツンダップ・KS750と共に、ロシア戦線や北アフリカ戦線で広く使用されました。しかし、評価期間を経てツンダップが選ばれ、1942年8月には両社の部品を標準化し、ハイブリッドモデル（BW43）を製作することが合意されました。

R75の生産は1944年まで続けられ、総生産台数は約2万台に達しました。戦後にはソ連によって98台が組み立てられましたが、本格的な生産には至りませんでした。しかし、標準化プログラムによって、R75とKS750の部品の70％が共通化され、現在でもスペアパーツを入手することが可能です。

技術

R75は、マルチピースのボルト式チューブラースチールフレームと、油圧ダンピングを備えたテレスコピックフォークを採用しています。後輪にはサスペンションがなく、サイドカーにリーフスプリングが備わっています。フレームは分割されており、エンジンを迅速に交換することが可能です。また、軽量トレーラーなどを取り付けることもできます。

点火システムにはマグネトーが採用されており、信頼性の高い点火動作が保証されています。4速ギアボックスは、手元のレバーまたは足元のシフトレバーで操作でき、オンロード・オフロード走行用のギア比、オフロードリダクション、リバースギアを備えています。動力は、後輪とサイドカーのホイールに伝達され、リミテッドスリップディファレンシャルによって、高い操縦性と走破性を実現しています。

初期のR75は、エアクリーナーに水や泥が溜まるトラブルに見舞われましたが、1942年末にはフィルターが燃料タンクの上部に移動され、マフラーも上方に折れ曲がった形状に変更されました。これにより、水中走行も可能となり、排気ガスを利用した暖房システムも搭載されました。

その後の影響

R75のデザインや二輪駆動構造は、ソ連の「IMZ・ウラル」やウクライナの「KMZ-DNEPR」などのサイドカー付きオートバイに影響を与え、現在でも製造されています。また、東ドイツではR75のエンジン改良型である「AWO-700」も製造されました。

その他

BMW・R75は、世界初の二輪駆動型サイドカーとして誤解されることがありますが、実際には1928年にソ連で試作車が開発され、1929年には英国で特許が取得されています。R75の生産台数は、設計の複雑さと製造コストの高さから、予定されていた18,000台よりも少ない16,510台にとどまりました。しかし、その優れた技術と耐久性から、現在でもコレクターズアイテムとして非常に人気があり、高値で取引されています。また、復元されたR75は、オンロードでもオフロードでも日常的に使用されています。

まとめ

BMW・R75は、第二次世界大戦という過酷な状況下で開発された軍用オートバイです。その優れた性能と特徴的なデザインは、現代のオートバイにも大きな影響を与えています。現在でも多くのファンに愛され、歴史的な価値を持つ一台として、その名を知られています。

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