BOP試薬

BOP試薬とは

BOP試薬（ボップしやく、BOP reagent）は、ホスホニウムを基本構造にもつ試薬であり、主にペプチド合成に用いられます。この試薬は、もともとカストロ（Castro）らによって開発されたもので、正式には「ヘキサフルオロリン酸1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス（ジメチルアミノ）ホスホニウム」を指します。BOPはその略号であり、CAS番号は56602-33-6です。近年では、さまざまな誘導体が開発されており、これらのホスホニウム系ペプチド縮合剤全般を指してBOP試薬と呼ぶことが一般的になっています。

概要

BOP試薬の開発は、カストロらの研究によるもので、彼らはトリス（ジメチルアミノ）ホスフィンと四塩化炭素（CCl4）を用いたペプチドの縮合反応について調査しました。研究の過程で、活性中間体としてクロロトリス（ジメチルアミノ）ホスホニウムが明らかになり、これに基づいて安定した活性種であるBOPが開発されました。このため、BOPはカストロ試薬（Castro's reagent）とも称されることがあります。

カストロ試薬およびその誘導体は、反応系内で遊離カルボン酸と反応し、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール（HOBt）エステルなどの活性エステルを生成する能力があります。この技術を用いて、P. RivaileらはLH-RHホルモンのフラグメントを合成し、Wengerらはシクロスポリンを合成しました。

利点と課題

BOP試薬の特筆すべき点は、HOBtエステルを生成するDCC/HOBt法に比べて、反応が迅速であることです。また、反応過程で副産物としてジシクロヘキシル尿素などの不溶性物質を生じないため、有利な特徴があります。しかし、一方でカストロ試薬は、反応後に生成されるHMPAに発癌性の懸念があり、これが課題として挙げられます。そのため、より安全なBOP誘導体が代替品として多く用いられています。

BOP誘導体

以下に代表的なBOP誘導体を示します：
1. PyBOP® - メルクA.G.社の登録商標。CAS番号: 128625-52-5
2. PyAOP - CAS番号: 156311-83-0
3. BroP - CAS番号: 50296-37-2
4. PyCloP - CAS番号: 133894-48-1
5. PyBroP® - CAS番号: 132705-51-2
6. DEPBT - CAS番号: 165534-43-0

出典

本記事の情報は、泉屋信夫らの著作『ペプチド合成の基礎と実験』（丸善、1985年、ISBN 4-621-02962-2）を基にしています。

関連項目

• - ペプチド合成
• - 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール

以上のように、BOP試薬はペプチド合成に重要な役割を果たしており、研究や応用の場面で頻繁に利用されています。その多様な誘導体は、今後さらなる発展が期待される分野です。

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