C.R.W. ネヴィンソン

クリストファー・リチャード・ウィン・ネヴィンソン（Christopher Richard Wynne Nevinson, 1889年8月13日 - 1946年10月7日）は、20世紀初頭のイギリス美術界で特異な足跡を残した画家です。彼は、人物画、風景画、そして版画制作において才能を発揮し、特に第一次世界大戦の戦争画家としての名声は非常に高いです。しばしば「C.R.W. ネヴィンソン」と略称されることもあります。

美術学校での出会いと初期の活動

ネヴィンソンは、スレード美術学校でヘンリー・トンクスの指導を受け、スタンリー・スペンサーやマーク・ガートラーらと切磋琢磨しました。卒業後、パーシー・ウインダム・ルイスとともに「Rebel Art Centre」を設立しますが、イタリア未来派の提唱者であるフィリッポ・トンマーゾ・マリネッティの未来派宣言に同調したことからルイスと対立し、短命に終わりました。ルイスはその後、ネヴィンソンを排除して前衛美術集団「渦巻き派（ヴォーティシズム）」を立ち上げました。

第一次世界大戦と戦争画

第一次世界大戦が勃発すると、ネヴィンソンは負傷兵の救護活動に身を投じ、救急車の運転手として従事しました。その経験から、未来主義の機械美学とキュビスムの影響を強く受けた、力強い戦争画を描き始めました。彼の作品『[ミトラィユーズ]』は、同時代の画家ウォルター・シッカートから「絵画史における戦争画の中で、最も権威ある作品」と評されました。1917年には公式の戦争芸術家に任命され、当初はモダニズムのスタイルを用いて戦争の恐怖を描いていましたが、次第に現実的な描写へと移行していきました。

戦後の活動と晩年

第一次世界大戦後、ネヴィンソンはアメリカに渡り、ニューヨークの都市風景を描きました。しかし、戦時中の経験に関する誇張した発言や、抑うつ的な性格から、国内外で多くの敵を作ってしまいました。1920年、批評家のC・ルイス・ハインドは、ネヴィンソンを「最も議論され、最も成功し、最も有望で、最も賞賛され、最も憎まれたイギリスのアーティストの一人」と評しています。戦後のネヴィンソンのキャリアは、初期の勢いを失い、傑出した作品を生み出すことは少なくなりました。1937年には回顧録『ペイントと偏見』を出版しましたが、その内容は不正確で矛盾が多く、誤解を招くものでした。

生涯

ロンドンのハムステッドで生まれたネヴィンソンは、ジャーナリストの父と女性参政権運動家の母を持つ家庭で育ちました。シュルーズベリー校やアピンガム校で教育を受けましたが、美術への情熱からセント・ジョンズ・ウッド美術学校に進み、後にスレード美術学校へ入学しました。そこでは、マーク・ガートラーと親しくなり、「新原初主義」というグループを結成しましたが、ドーラ・キャリントンを巡る恋愛事件で関係が破綻しました。また、スレード美術学校の教授であるヘンリー・トンクスからは才能を認められず、画家になることを諦めるよう忠告されたという経緯があります。

スレード美術学校卒業後、ネヴィンソンはパリに渡り、アカデミー・ジュリアンで学びました。パリでは、ロシア人グループに参加し、ウラジーミル・レーニン、パブロ・ピカソ、アメデオ・モディリアーニらと交流しました。また、キュビスムや未来派の運動にも触れ、マリネッティやジーノ・セヴェリーニとも親交を深めました。ロンドンに戻ってからは、パーシー・ウインダム・ルイスと「Rebel Art Centre」を設立しましたが、未来派宣言を巡る対立から、短命に終わりました。第一次世界大戦勃発後、負傷兵の救護活動に携わった後、従軍画家として戦場を記録しました。

1916年に発表した『ミトラィユーズ』は、彼の代表作として知られています。1917年には、公式戦争芸術家として西部戦線を訪れ、戦争の現実を目の当たりにしました。戦後は、ニューヨークでの滞在や作品制作を通じて国際的な評価を得ましたが、自身の言動が原因で多くの敵を作り、戦前の名声を超えることはありませんでした。第二次世界大戦中は、再び戦争画の依頼を受けましたが、健康を害し、1946年に57歳でその生涯を閉じました。

ネヴィンソンの作品は、彼の複雑な性格と、激動の時代を生き抜いた画家としての情熱を映し出しています。未来派とキュビスムの影響を受けた革新的なスタイルと、写実的な描写を組み合わせた、力強い表現は、現代の観客にも強い印象を与え続けています。

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