CALM DOWN

CALM DOWN (シアターブルック)

『CALM DOWN』は、日本のロックバンド、THEATRE BROOK（シアターブルック）によって発表された、彼らにとって通算2枚目となるミニアルバム作品である。バンドの音楽的な深まりを示す一枚であり、その独特なサウンドアプローチとメッセージ性が凝縮されている。

音楽性と批評

本作におけるTHEATRE BROOKの音楽性は、揺るぎないブラックミュージックの手法をその基盤に置いている点が際立っている。ファンクやソウル、ブルースといったルーツミュージックからの影響を色濃く反映させつつ、彼ら独自の解釈と表現が加わることで、グルーヴ感に満ちたサウンドが創出されている。この強固な音楽的土台の上に展開されるリリックは、単なる表面的な流行を追うものではなく、普遍的な愛や平和（ラブ＆ピース）への願いを熱く歌い上げる一方で、社会や時代に対するある種の鋭さや攻撃的な視点をも内包している。

こうしたサウンドとメッセージの融合は、批評家からも高く評価された。特に、その表現方法が単なる模倣や表層的なスタイリングに終わらず、非常に真面目に、そして極めて洗練されたスタイリッシュな手法によって、楽曲に込められた精神性が高められ、見事なまでに作品として結実している点が強調された。例えば、音楽メディア『CDジャーナル』は、本作を評して「音はあくまでブラック・ミュージックの手法を基盤にし、乗せるメッセージは何処までもラブ&ピースで熱く攻撃的。それが表面的ではなく超真面目に超スタイリッシュにその精神性を高め、見事に表現された痛快作。」と絶賛している。この評価は、『CALM DOWN』が持つ音楽的な完成度と、メッセージを伝える上での真摯かつ独創的なアプローチが、聴き手に強い印象と共感を与える「痛快さ」につながっていることを示唆している。

収録曲

本ミニアルバム『CALM DOWN』には、全5曲が収録されている。これらの楽曲は全て、THEATRE BROOKの音楽的司令塔である佐藤タイジが作詞と作曲を手掛けている。また、楽曲の編曲はバンド自身が担当しており、彼らのメンバーそれぞれのプレイアビリティとバンド全体のアンサンブルがダイレクトに反映されたサウンドとなっている。

収録されている楽曲は以下の通り。

ありったけの愛
CALM DOWN
トゲのないバラ
泣かないでください
* 立ち止まって一服しよう

中でも、「ありったけの愛」は本作の代表曲の一つとして広く知られ、リリース後にはTHEATRE BROOKの通算9枚目のシングルとしても改めてカットされ、より多くのリスナーに届けられた。この楽曲は、その普遍的なメッセージとメロディから、後に他のアーティストによってカバーされることとなる。2006年9月には、歌手のhitomiが自身のシングル「アイ ノ コトバ」のカップリング曲としてこの楽曲をカバーし、新たな解釈で披露した。さらに時を経て、2013年にはシンガーソングライターの新山詩織のシングル「Don't Cry」のカップリング曲として、原作者である佐藤タイジ本人が新山詩織とのコラボレーションという形でセルフカバーバージョンを制作・発表しており、楽曲が持つ生命力と影響力の広がりを示している。

その他の収録曲も、アルバム全体のトーンとメッセージを形成する上で重要な役割を果たしている。アルバムタイトルと同名の「CALM DOWN」は作品の中核を担い、「トゲのないバラ」は強さと繊細さの二面性を、「泣かないでください」は聴き手の心に寄り添うような優しさを、「立ち止まって一服しよう」は現代社会に生きる人々への短い休息と省察を促すかのようなメッセージを含んでいる。これらの楽曲が一体となり、THEATRE BROOKならではの深みとグルーヴを持つミニアルバムを創り上げている。

『CALM DOWN』は、THEATRE BROOKがその確固たる音楽性と社会的な視点からのメッセージを、独自のスタイルで表現した重要な作品であり、彼らのディスコグラフィーにおいて特別な輝きを放っている一枚と言えるだろう。

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