CALS/EC

CALS/EC（キャルス/イーシー）とは

CALS/ECは、Continuous Acquisition and Life-cycle Support（継続的な調達とライフサイクル支援）とElectronic Commerce（電子商取引）の略称です。この概念は、製品やサービスのライフサイクル全体にわたる情報の電子化と共有を通じて、コスト削減、生産性向上、効率化を目指すものです。

CALSの変遷

CALSは、アメリカ国防総省で兵器の生産性向上を目的とした「コンピュータによる軍事の後方支援」として始まりました。当初は「Computer Aided Logistics Support」と呼ばれていましたが、IT革命の進展と共にその適用範囲は拡大し、名称も変化していきました。

1987年には「Computer aided Acquisition and Logistic Support」となり、設計（CAD）、製造（CAM）、技術者（CAE）の支援、電子データ交換（EDI）、電子商取引（EC）などの概念が取り入れられました。この時期はまだ電子商取引が発展途上であったため、物流（Logistics）という言葉が残されました。

1993年には「Continuous Acquisition and Life-cycle Support」となり、コンピュータという言葉や軍事的な意味合いが取り除かれ、ライフサイクル全般における情報提供支援へと発展しました。この頃、国際標準としての取り扱いが推進され、第三世代CALSとして広く浸透しました。

1994年には「Commerce At Light Speed（高速の商取引）」という名称が生まれ、アメリカ以外の国々でも普及が始まりました。

しかし、1995年には、CALSの適用拡大によって市場に不整合な情報が散乱し、混乱を招いたことを皮肉って、「Chaos At Light Speed」という名称が使われることもありました。

日本におけるCALS/EC

日本では、1990年代に公共事業分野で「建設CALS」として導入されました。これは、設計と工事の分離発注や、使用材料のメーカー特定が難しいといった状況を背景に、電子納品や電子入札システムの導入から始まりました。国土交通省（旧建設省）が中心となり、情報基盤整備事業や標準化が進められました。

建設省と運輸省の統合により、運輸省で進められていた空港・港湾CALSと一体化し、CALS/ECという名称になりました。現在では、電子納品や電子入札などがCALS/ECの主要な構成要素となっています。

国土交通省の基準が基本となっていますが、発注先によって細かな規定が異なる場合があります。電子入札は国土交通省だけでなく、他の官庁や自治体でも導入されています。

また、総務省は電子自治体として、自治体内の窓口機能などの統合情報化を進めており、CALS/ECとの情報連携が今後の課題となっています。

CALS/ECの目的と効果

CALS/ECの主な目的は、以下の通りです。

コスト削減: 紙媒体の資料を電子化することで、印刷コストや保管コストを削減できます。
生産性向上: 情報共有の効率化により、業務プロセスを迅速化できます。
情報共有の円滑化: 異なる組織間でも、電子データを通じて円滑な情報共有が可能です。
標準化: データ形式や手続きを標準化することで、業務の効率化を図れます。
透明性の向上: 電子記録により、業務プロセスが可視化され、透明性が向上します。

CALS/ECに関連する技術

CALS/ECの導入には、以下のような技術が活用されています。

CAD/CAM/CAE: 設計、製造、技術解析を支援するソフトウェア
EDI: 電子データ交換
電子入札: インターネットを利用した入札システム
電子納品: 電子媒体による成果物の納品
ライフサイクルマネジメント: 製品の企画から廃棄までの全過程を管理する手法

まとめ

CALS/ECは、製品ライフサイクル全体にわたる情報共有と電子化を推進し、コスト削減、生産性向上、情報共有の円滑化を目指す概念です。アメリカで軍事目的から始まったCALSは、IT技術の進化と共にその適用範囲を広げ、現在では様々な分野で活用されています。日本においては、国土交通省が中心となり、公共事業分野での導入が進められています。今後の課題として、電子自治体との連携や、さらなる標準化が挙げられます。

脚注

関連情報として、電子商取引（EC）、電子入札、電子納品、ライフサイクルマネジメント、経営情報システムなどを参照してください。
参考になる外部リンクとして、日本建設情報総合センター(JACIC)のCALS/ECサイト、国土交通省の公共事業支援統合情報システムサイト、土工協CALS/EC部会などがあります。

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