CLNS

CLNS（Connection Less Network Service）は、開放型システム間相互接続（OSI）モデルにおけるネットワーク層で提供される、コネクションレス型の通信サービスです。

概要

CLNSの最大の特徴は、データ転送を行う前に通信路を確立する必要がない点です。このコネクションレス方式により、柔軟かつ効率的なデータ伝送が可能になります。CLNSでは、送信先のNSAPアドレスに基づいて、個々のメッセージの経路が決定されます。これは、通信のたびに経路選択を行うことで、ネットワークの状況変化に対応できる利点があります。

OSIプロトコルにおいて、CLNSはCLNP（Connection Less Network Protocol）によって実現され、トランスポート層のTP4（Transport Protocol Class 4）がこれを利用します。CLNPは、インターネットではIP（Internet Protocol）がその役割を代替していますが、通信事業者のネットワークでは依然として広く利用されています。また、CLNPを基盤とした新しいシステムも開発され続けています。

CLNPは、ルーティングプロトコルとしてIS-IS（Intermediate System to Intermediate System）を採用しています。IS-ISはDEC（Digital Equipment Corporation）によって開発されたルーティングプロトコルで、ネットワーク内の経路情報を効率的に交換します。

CLNPパケットには、パケットの種類を示す値として「1」と「28」が使用されます。「1」はエラー報告パケットを示し、それ以外のパケットはすべて「28」（0x1c）です。たとえば、TP4のパケットも「28」で示されます。IPのようにプロトコルを識別するフィールドはCLNPには存在せず、代わりにNSAPアドレスのNSEL（Network Service Access Point Selector）フィールドを使用して、適切なプロトコルハンドラにパケットを転送します。

エラー処理に関しては、IPがエラーを検出するとICMP（Internet Control Message Protocol）を用いて送信元にエラーパケットを送るのに対し、CLNPでは、Error Report Requestedフラグが有効な場合のみエラー報告を行います。CLNPヘッダは、IPヘッダのような32ビット境界でのパディングを必要としないため、柔軟な構造を持ち、最大254オクテットまで拡張可能です。

CLNPでは、全体の長さを示すフィールドとセグメントの長さを示すフィールドが別々に存在するため、受信側でのパケット再構成が容易に行えます。

CLNPの仕様はISO 8473に、TP4の仕様はISO 8073にそれぞれ規定されています。

CLNSを提供するプロトコル

CLNSサービスを提供する主な通信プロトコルには、以下のようなものがあります。

CLNP（ITU-T勧告 X.233）: コネクションレスモードのネットワークサービスを提供する公衆データ網プロトコルです。
SCCP（Signalling Connection Control Part、ITU-T勧告 Q.711）: No.7共通線信号方式で定義されるプロトコルの一つで、こちらもコネクションレスモードのネットワークサービスを提供します。
Internet Protocol（IP）およびUser Datagram Protocol（UDP）: インターネットで広く利用されるこれらのプロトコルも、コネクションレス型のネットワークサービスを提供しています。

まとめ

CLNSは、コネクションレス型のネットワークサービスを提供する上で、重要な役割を担っています。特に通信事業者のネットワークでは、その柔軟性と効率性から、現在でも広く利用されています。

外部リンク

ITU-T Recommendation X.213

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