IS-IS

IS-IS（Intermediate System to Intermediate System）は、自律システム（AS）内で使用されるルーティングプロトコルの一種であり、Interior Gateway Protocol（IGP）に分類されます。このプロトコルは、国際標準化機構（ISO）が策定したOSI（開放型システム間相互接続）のネットワーク層におけるコネクションレス型通信サービスであるCLNS（Connectionless Network Service）上で動作するIGPとして開発されました。

IS-ISの概要

IS-ISは、OSPF（Open Shortest Path First）と同様に、リンクステート型ルーティング（LSA）を採用しています。これは、ネットワーク内の各ルーターがリンクの状態を共有し、その情報を基に最適な経路を計算する方式です。具体的には、ダイクストラ法を用いてスパニングツリーを生成し、それに基づいて経路を決定します。初期のIS-ISを参考にしてOSPFが作られたという経緯もあり、両者には多くの類似点が見られます。

両プロトコルは、リンクステート型ルーティングであり、ダイクストラ法を利用して経路を決定し、エリアの概念を持ち、大規模ネットワークに対応できるなどの共通点があります。また、Helloパケットを定期的に送信し、隣接するルーターの生存確認を行う機能も共通しています。

OSPFとの相違点

しかし、エリアの概念や隣接関係の持ち方には相違点があります。OSPFでは、ネットワークを複数のエリアに分割する際、バックボーンエリアを設けて間接的に接続しますが、IS-ISにはバックボーンエリアの概念がありません。IS-ISでは、各エリア内のルーティングを行うL1ルータ、エリア間のルーティングを行うL2ルータ、そして両方の役割を担うL1/L2ルータによって構成されます。隣接関係の持ち方については、OSPFのDR（Designated Router）と同様に、IS-ISでは最もプライオリティの高いルータをDIS（Designated Intermediate System）として選出します。

ただし、リンクステート情報の扱いには違いがあります。OSPFでは、変更が発生したルータがDRに情報を通知し、DRが隣接ルータに転送するのに対し、IS-ISでは変更が発生したルータが直接全ての隣接ルータに情報を送信します。DISは、経路障害などにより隣接ルータ間のリンクステート情報に不整合が生じた場合に同期を取る役割を担います。また、OSPFではDRの予備としてBDR（Backup Designated Router）が選出され、DRダウン時に即座に交代するのに対し、IS-ISにはDISの予備は存在しません。このため、IS-ISでは、より適切なルータが接続された場合、動的にDISが交代します。

Integrated IS-IS

IS-ISは、元々OSI環境でのルーティングプロトコルであり、TCP/IP上での使用は想定されていませんでした。しかし、IS-ISのプロトコルとしての評価が高かったことや、OSIプロトコルスイートへのスムーズな移行のために、TCP/IP上でも使用したいという要望が高まりました。その結果、CLNSとIPの両方で機能するように改良されたIntegrated IS-IS（統合IS-IS）が開発されました。Integrated IS-ISでは、IPアドレスをMACアドレスと同様の端末識別子として扱い、ルーティングにはCLNS固有のアドレスであるNSAP（Network Service Access Point）を使用します。

OSIはTCP/IPに取って代わられ、ほとんどのプロトコルが使用されなくなりましたが、IS-ISはIntegrated IS-ISとして現在でも一部のシステムで利用されています。IPv6への対応もIETFによって策定され、2008年10月に正式に公開されました。

主なRFC

RFC 1142（1990年2月）：IS-ISプロトコルの内容に関する規定
RFC 1195（1990年12月）：Integrated IS-ISに関する規定
RFC 5308（2008年10月）：IPv6への対応

関連事項

ルーティングプロトコル
IEEE 802.1aq（Shortest Path Bridging）
Open Shortest Path First（OSPF）

参考文献

* 久米原 栄、『IPルーティング入門』、ソフトバンククリエイティブ、2007年、ISBN 978-4-7973-3743-3

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