CSMA/CA

CSMA/CA（搬送波感知多重アクセス/衝突回避方式）

CSMA/CA（Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance）は、無線LANの規格であるIEEE 802.11において、データリンク層の通信プロトコルとして採用されている重要な技術です。この方式は、複数のデバイスが同一の通信媒体を共有する際に、効率的かつ円滑なデータ伝送を実現するために設計されました。

CSMA/CAの基本手順

CSMA/CAは、主に以下の3つの段階を経て動作します。

1. 搬送波感知（Carrier Sense）
- 通信を開始する前に、まず媒体が使用中かどうかを検知します。具体的には、他のデバイスが通信を行っていないかを確認するため、無線信号の受信を試みます。媒体が空いていることが確認された場合、次の段階に進みます。

2. 多重アクセス（Multiple Access）
- 複数のデバイスが同一の通信媒体を共有する状況下で、他のデバイスが通信を行っていないことが確認された場合、自らの通信を開始します。これにより、複数のデバイスが効率的に媒体を利用することができます。

3. 衝突回避（Collision Avoidance）
- 搬送波感知の段階で媒体が使用中であることが確認された場合、他のデバイスの送信が終了するのを待ちます。送信終了を検知した後、すぐに送信を開始すると衝突が発生する可能性が高いため、ランダムな待ち時間（バックオフ時間）を設けます。このランダムな待ち時間は、衝突の可能性を低減するために設けられており、公平な通信機会を確保する役割も果たします。待ち時間は、送信の試行回数が増えるにつれて徐々に短くなるように調整され、特定のデバイスが永久に送信できないという状況を回避します。

CSMA/CD|CSMA_CDとの違い

CSMA/CAとよく比較される技術にCSMA/CD|CSMA_CD（Carrier Sense Multiple Access/Collision Detection）があります。CSMA/CD|CSMA_CDは、主に有線LANで使用される技術で、送信中に衝突を検出し、衝突が検出された場合には即座に送信を中止して、ランダムな待ち時間を挿入します。一方、CSMA/CAは送信前に待ち時間を設ける点が異なります。無線通信環境では、衝突検出が難しいため、衝突を事前に回避するCSMA/CAが適しています。

CSMA/CAが用いられる理由

CSMA/CAは、無線通信のように信頼できる衝突検出手段がない伝送路で特に有効です。無線LAN環境では、電波の干渉や減衰などの要因により、衝突の検出が難しく、CSMA/CD|CSMA_CDのように衝突を検出して対処する方法は現実的ではありません。そのため、送信前にランダムな待ち時間を設けることで、衝突を事前に回避するCSMA/CAが広く利用されています。

CSMA/CAの問題点

CSMA/CAには、いくつかの課題も存在します。

隠れ端末問題

- 3つの端末A、B、Cがあり、AとB、AとCは互いに通信可能ですが、BとCは互いに通信できない状況を考えます。このとき、BとCが同時にAへデータを送信しようとすると、BとCは互いの送信を検知できず、衝突が発生してしまう可能性があります。これを「隠れ端末問題」といいます。IEEE 802.11では、RTS/CTS（Request to Send/Clear to Send）という制御メッセージの交換によって、この問題を解決しています。RTS/CTSを用いることで、送信権の予約を行い、衝突を回避できます。

オーバーヘッド

- CSMA/CAでは、送信前に必ず待ち時間が発生するため、どうしてもオーバーヘッドが生じます。特に、通信が頻繁に行われる環境では、この待ち時間が無視できないほどの遅延を引き起こす可能性があります。