Cakewalk (シーケンサ)

Cakewalk

Cakewalkは、かつてTwelve Tone Systems社（後のCakewalk社）が開発を手がけていた、歴史のある音楽制作ソフトウェアシリーズです。主にMIDIシーケンサとして音楽家やクリエイターに利用されました。

歴史とプラットフォーム

Cakewalkの起源は古く、最初のバージョンである1.0は1987年にMS-DOS向けにリリースされました。この初期のバージョンは、MIDIデータの編集や再生をコンピュータ上で行うためのツールとして登場しました。その後、コンピュータのプラットフォームがWindowsへと移行する流れに合わせて、CakewalkもWindowsに対応するようになりました。特に初期のMS-DOS版、バージョン4.0以前は、MIDI通信にUARTモードを利用しており、Roland社製のMIDIインターフェースカードであるMPU-401がインテリジェント・モードで動作している必要がありました。これは当時のパーソナルコンピュータにおける音楽制作環境の技術的な制約を反映しています。

エディション

Cakewalkシリーズには、主なエディションとしてCakewalk ProとCakewalk Expressが存在しました。Cakewalk Proは多機能なフルバージョンであったのに対し、Cakewalk Expressは機能を限定したライトバージョンでした。Express版は、例えば扱えるMIDIトラック数が25、MIDIアウトポートが1つといった制限がありましたが、サウンドカードなどのハードウェア製品にバンドルされる形で広く提供され、多くのユーザーがCakewalkに触れるきっかけとなりました。

機能と進化

Cakewalkは当初、純粋なMIDIベースのシーケンサとして設計されていました。MIDIデータの入力、編集、再生に特化しており、オーディオ（音声）信号の本格的な取り扱いはできませんでした。例外的に、初期バージョンでも2本のステレオWAVファイルをトリガー再生する機能は搭載されていましたが、これは限定的なものでした。ソフトウェアがデジタルオーディオワークステーション（DAW）へと進化していく中で、Cakewalkもデジタルオーディオの録音、編集、ミキシングといった機能を徐々に追加していきました。本格的なオーディオサポートが実現されたのは、Cakewalk Pro Audioの登場以降です。

ソフトウェアの編集機能としては、視覚的にMIDIデータを編集できるピアノロール・エディタや、限定的ながら譜面編集機能が搭載されていました。これらの機能は、Windows 3.1に対応したCakewalk Win16 Version 3.01で初めて利用可能となりました。

Cakewalkの特にユニークな機能の一つに、内蔵されたスクリプト言語CAL（Cakewalk Application Language）があります。これはユーザーが独自のスクリプトを作成し、Cakewalkの機能を拡張したり、特定の作業を自動化したりすることを可能にする画期的な機能でした。ピアノロールエディタやCALを含む、これらの主要な機能の多くは、Cakewalkシリーズの後継製品であるCakewalk SONARへと引き継がれました。主要なDAWソフトウェアが数多く存在する中で、スクリプト言語による拡張性を標準でサポートするものは稀であり、SONARは（そしてそれに先立つCakewalkは）この点において独自の地位を確立していました。

Cakewalkシリーズは、MS-DOS時代からWindows時代にかけて、多くの音楽クリエイターに利用され、MIDIシーケンシングからDAW機能へとその能力を拡張しながら、音楽制作ソフトウェアの進化に貢献しました。その技術や思想は、後継のSONARへとしっかりと受け継がれています。

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