Classless Inter-Domain Routing

CIDR（Classless Inter-Domain Routing）とは

Classless Inter-Domain Routing（CIDR、サイダー）は、インターネット上のルーターにおけるルーティングテーブルの肥大化を抑制し、IPアドレスの浪費を防ぐための技術です。従来のクラスA、B、Cといった固定的なアドレス割り当て方式を廃止し、より柔軟なアドレス管理とルーティングを可能にしました。CIDRでは、IPアドレスをプレフィックスとホストアドレスに分けて認識し、プレフィックスの長さを自由に設定できる可変長サブネットマスク（VLSM）を使用します。

CIDRの背景

初期のインターネットでは、IPアドレスはクラス分けされ、固定長のアドレスブロックが割り当てられていました。しかし、この方式はIPアドレスの枯渇を招き、ルーティングテーブルの肥大化を引き起こすため、スケーラビリティに問題がありました。この課題に対処するため、1993年にIETFはRFC 1518とRFC 1519を策定し、CIDRを導入しました。

CIDRの仕組み

CIDRでは、IPアドレスを「プレフィックス」と「ホストアドレス」に分けて考えます。プレフィックスはネットワーク部分を示し、ホストアドレスはネットワーク内の個々の機器を識別します。CIDR記法では、IPアドレスの後に「/」とプレフィックス長を記述します。例えば、`192.168.0.0/16`という表記は、`192.168.0.0`というIPアドレスの先頭16ビットがネットワークアドレスであることを示します。

可変長サブネットマスク (VLSM)

CIDRの重要な要素の一つがVLSMです。VLSMにより、プレフィックス長を自由に設定できるようになり、ネットワークの規模に合わせて柔軟にIPアドレスを割り当てることが可能になりました。

CIDRによるアドレス集約

CIDRは、連続する複数のプレフィックスをまとめて一つにする「スーパーネット化」を可能にします。これにより、ルーティングテーブルのエントリ数を削減し、ルーティング効率を向上させることができます。例えば、複数の/24ネットワークをまとめて/20ネットワークとして扱うことができます。

CIDRブロック

CIDRでは、同じプレフィックスを持つIPアドレスのグループを「CIDRブロック」と呼びます。CIDRブロックは、IPアドレスを2進数で表現したときに、先頭のビットが一致するアドレスの集合です。CIDRブロックは、A.B.C.D/Nのような形式で表現され、Nはプレフィックス長を表します。プレフィックス長が短いほど、CIDRブロックに含まれるアドレス数は多くなります。

CIDRブロックの割り当て

IANA（Internet Assigned Numbers Authority）は、地域インターネットレジストリ（RIR）に対して大きなCIDRブロックを割り当てます。RIRは、割り当てられたブロックをさらに分割し、ISPや組織に割り当てます。ISPは、さらに細かく分割してエンドユーザーに割り当てます。

CIDRの利点

• - IPアドレスの効率的な利用: アドレスの浪費を防ぎ、IPアドレス枯渇問題の緩和に貢献します。
• - ルーティングテーブルの縮小: アドレス集約により、ルーティングテーブルのエントリ数を減らし、ルーティング処理の負荷を軽減します。
• - 柔軟なアドレス割り当て: 可変長サブネットマスクにより、ネットワークの規模に合わせた柔軟なアドレス割り当てが可能になります。

CIDRとサブネットマスク

サブネットマスクは、プレフィックス長を32ビットのビットマスクで表現したものです。サブネットマスクとプレフィックス長は、同じ情報を異なる形式で表したものです。CIDRでは、可変長サブネットマスクを用いて、任意のアドレス境界でサブネットを分割できます。

CIDRの歴史

初期のIPアドレスは、クラスA、B、Cに分類され、固定長のアドレスブロックが割り当てられていました。しかし、インターネットの拡大に伴い、この方式ではアドレスが不足し、ルーティングテーブルの肥大化が問題となりました。そこで、CIDRが開発され、IPアドレスの効率的な利用とルーティングの効率化が実現しました。CIDRの導入により、従来のクラス分け方式は廃止され、classless routingが主流となりました。

IPv6とCIDR

IPv6でも、IPv4のCIDRの考え方が踏襲されています。IPv6ではクラスの概念はなく、アドレスはプレフィックスとホストアドレスで構成されます。IPv6アドレスは128ビット長で、プレフィックス長は0から128までの範囲で指定できます。

まとめ

CIDRは、現代のインターネット基盤を支える重要な技術です。柔軟なアドレス管理、ルーティング効率の向上、IPアドレスの効率的な利用など、多くのメリットをもたらします。CIDRの理解は、ネットワークエンジニアにとって不可欠です。

用語の補足

プレフィックス: IPアドレスのネットワーク部分を示すビット列。
ホストアドレス: IPアドレスの機器を識別するビット列。
可変長サブネットマスク (VLSM): ネットワークの規模に合わせて自由にサブネットマスクを調整できる機能。
スーパーネット: 複数の連続したネットワークを一つにまとめたもの。
CIDRブロック: 同じプレフィックスを持つIPアドレスの集合。
IANA: インターネットにおけるIPアドレスなどの資源の管理を行う機関。
* RIR: 各地域におけるIPアドレスなどの資源の管理を行う機関。

参考文献

• - RFC 1518: An Architecture for IP Address Allocation with CIDR
• - RFC 4632: Classless Inter-domain Routing (CIDR): The Internet Address Assignment and Aggregation Plan
• - RFC 2317: Classless IN-ADDR.ARPA delegation
• - RFC 4291: IP Version 6 Addressing Architecture
• - RFC 3021: Using 31-Bit Prefixes on IPv4 Point-to-Point Links

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