Close to me…

KOTOKOの音楽キャリアの原点とも呼べる重要な一曲が「Close to me…」です。2000年12月1日に発売されたアダルトゲーム『effect 〜悪魔の仔〜』（ivory）の主題歌として誕生しました。I'veサウンドらしい疾走感と切なさを兼ね備え、当時のPCゲーム音楽シーンで注目を集めました。

「Close to me…」は、KOTOKOがボーカリストとして正式に発表された最初の楽曲です。これ以前にI'veのプロジェクトで仮歌などを担当した経験はありましたが、自身の名前がクレジットされ、作詞も手掛けた作品として最初に世に出たため、「実質的なデビュー曲」として位置づけられています。I'veとのタッグにおいて、作詞とボーカルを両方担当したのも、この曲が最初でした。これは、彼女のアーティストとしての重要な一歩でした。

楽曲制作には興味深い経緯があります。当時のI'veでは、クライアントへのプレゼン用に複数のボーカリストが仮歌を録音し、採用を決定するケースが一般的でした。しかし、「Close to me…」では、I'veの中心人物である高瀬一矢氏が、最初からKOTOKOの歌声が最適だと考え、彼女の起用を強く希望したのです。KOTOKO自身も「高瀬さんが私に歌わせてみたいと思ってくださったんでしょうね」と語っており、高瀬氏の強い意向があったことが伺えます。この高瀬氏の指名が、後に多くの名曲を生み出す強力なタッグの原点となりました。

本楽曲が最初にメディアに収録されたのは、ゲーム『effect 〜悪魔の仔〜』に同梱されたサウンドトラックでした。一般市場で手に入れられるようになったのは、2003年9月5日発売のI've Girlsコンピレーションアルバム『OUT FLOW』に収録された時です。これが市販CDへの初収録となり、楽曲の認知度を高めました。約20年を経た2020年4月21日には、KOTOKO自身のデビュー20周年記念アルバム『The Bible』に収録され、初めて本人名義の公式アルバムに収められる歴史的な出来事となりました。

「Close to me…」は、KOTOKOのライブやI've関連イベントでしばしば披露される定番曲です。そのエネルギッシュなパフォーマンスは、多くの観客を魅了してきました。映像化されたライブとしては、『Starlight Symphony -KOTOKO LIVE 2006 IN YOKOHAMA ARENA-』、『I've in BUDOKAN 2009 ～Departed to the future～』、『"thank you" and "from now" KOTOKO LIVE IN BUDOKAN 2010 『Pleasure X Pleasure = Pleasure!!!』』、『ビジュアルアーツ大感謝祭 LIVE 2012 in YOKOHAMA ARENA～きみとかなでるあしたへのうた～』などがあり、ライブでの特別な輝きを確認できます。

この楽曲は、その人気から複数のアーティストによってカバーされています。2003年にはBarbarian On The Grooveが霜月はるかをボーカルに迎えてカバー（『I've Sound Tribute』収録）。2004年には怜奈によるリミックスバージョン「Close to me… (Mixed up ver.)」が発表（『Mixed up -I've Remix Style-』収録）。2011年には、島みやえい子が自身のアルバム『TRIBAL LINK-R』でカバーするなど、様々な解釈で歌い継がれています。

KOTOKOの「Close to me…」は、単なるゲーム主題歌としてだけでなく、KOTOKOというアーティストの誕生、I'veサウンドの発展を語る上で欠かせない、極めて重要な楽曲です。実質的なデビュー曲であり、作詞・ボーカルを初めて手掛けた記念碑として、そして20年以上の時を経てなお多くのファンに愛され続ける名曲として、その価値は色褪せません。KOTOKOの「始まり」を象徴する、ファンにとってかけがえのない一曲と言えるでしょう。

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