Common Open Software Environment

Common Open Software Environment (COSE)とは

1993年3月、当時の主要なUNIXベンダーが結集し、業界団体Common Open Software Environment（COSE）が設立されました。その目的は、オペレーティングシステム（OS）の統合されたオープンな標準を策定することでした。この動きは、当時「UNIX戦争」と呼ばれた状況が、業界の成長を阻害しているという認識から生まれました。

COSE設立の背景

当時、マイクロソフトはデスクトップ市場を席巻し、UNIX市場にも進出し始めていました。ノベルのNetWareもマイクロソフトのネットワーク製品に押されつつありました。このような状況下で、UNIXをマイクロソフトに対抗するための切り札として活用しようとする動きが活発化しました。ノベルとAT&TはUnivelという協業を開始しましたが、後にノベルがUNIX関連資産を買い取り、この協業は終了しました。

COSE設立以前にもUNIX統合の試みはありましたが、COSEには2つの大きな特徴がありました。一つは、UNIX陣営が初めて一つにまとまった試みであったこと。もう一つは、既存技術の標準化だけでなく、新たな技術を一から作り出すことを指向していた点です。

COSEの初期メンバー

COSEの初期メンバーは、「The Big Six」または「SUUSHI」とも呼ばれました。これらの企業は当時の主要なUNIXシステムおよびOSベンダーであり、UNIXブランドとAT&T由来のソースコードを保有していました。また、1980年代後半から1990年代初頭にかけて存在したOSFとUNIX International（UI）という二つのUNIX陣営を代表する企業群でもありました。

• - ヒューレット・パッカード
• - IBM
• - Santa Cruz Operation (SCO)
• - サン・マイクロシステムズ
• - Univel
• - UNIX Systems Laboratories (USL)

当初、主要メンバーであるDECの名前がありませんでしたが、後にCOSEを支持する声明を発表しました。

COSEの重点領域

COSEは、共通デスクトップ環境、ネットワーク、グラフィックス、マルチメディア、オブジェクトベースの技術、システム管理を重点領域としていました。1993年9月1日には、75以上の企業のサポートを得て、統合UNIX仕様の開発を発表しました。

UNIX標準化への貢献

OSFやUIとは異なり、COSEは単一のオペレーティングシステムを開発・推進するのではなく、既存のOSインタフェース仕様を調査・検討しました。その結果、「Spec 1170」と呼ばれるリストが作成され、これが後のSingle UNIX Specificationへと繋がりました。

Spec 1170は、既存のUNIXアプリケーション群を調査し、1,170のシステムコールとライブラリ関数をリストアップしたものです。その後もインタフェースは追加されましたが、このリストはUNIX標準化の基礎となりました。仕様の管理はX/Openに任され、1993年10月には、ノベルが所有していたUNIXの商標権がX/Openに移されました。これにより、UNIXブランドは特定のソースコード実装とは無関係となり、UNIX仕様に準拠したOSであれば、どの企業でもUNIXブランドを利用できることになりました。

Common Desktop Environment (CDE)の開発

COSEは、UNIXブランドのオープン化と標準化と並行して、Common Desktop Environment (CDE) を開発しました。CDEはX Window Systemベースのユーザー環境であり、HP、IBM、サンが共同で開発しました。そのインターフェースおよび開発ツールには、OSFのMotifウィジェット・ツールキットが採用されました。

その他の技術

デスクトップ環境やOS自体については、COSEは一種の統合を達成しましたが、他の領域では既存の競合する規格を同時に承認するという方針を採りました。例えば、ネットワークに関しては、OSFのDCE、UIのONC+、NetWareクライアントが採用されました。オブジェクトベース技術に関しては、CORBAが基盤技術として選ばれましたが、実装方法は各企業に任されました。

COSEの遺産

1994年3月、UIとOSFは合併し、OSFを名乗ることを発表しました。COSEは、新生OSFの「Pre-Structured Technology」（PST）プロセスの基盤となりました。このPSTプロセスは、1996年にOSFとX/Openが合併して誕生したThe Open Groupへと発展していきました。

結果として、COSEは統一されたUNIX標準を生み出し、サンのOPEN LOOKに終止符を打ち、Motifベースのデスクトップを標準化することに貢献しました。他の領域では、当初の目標ほどの成果は上げられませんでしたが、わずか12ヶ月の活動でUNIXの将来に多大な影響を与えたことは間違いありません。

COSEは、UNIX業界の混乱期に、業界全体の利益を優先し、オープンな標準化を推進した重要な存在でした。その功績は、現在のオープンソースソフトウェアの発展にもつながっていると言えるでしょう。

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